洋書多読におすすめ!イギリス英語を学ぶなら読んでおきたい英国作家作品10選

『英国王のスピーチ』でおなじみの発音、そしてエレガントな言い回しで知られるイギリス英語を習得したいという方は少なくないようです。近年では『シャーロック』や『ゲーム・オブ・スローンズ』のような、イギリス人俳優が中心の人気ドラマの流行によって、British Englishがより身近になりました。

今回は、「イギリス英語」の特徴をはっきりと示しつつ、物語としても純粋に楽しめる小説や戯曲を厳選してご紹介します。イギリス人作家による優れた作品に目を通すことで、「英国語」としてのEnglishを用いる際におさえておきたい歴史や文化にも浸ることができます

1. Pride and Prejudice (Jane Austin著 1813)

【おすすめポイント】

  • 元祖ロマンス小説
  • 共感をよぶキャラクター
  • 色あせないテーマ

『プライドと偏見』というタイトルは、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。裕福でありながらプライドが高いため嫌われがちな Mr. Darcy と、貧しい家庭の出身ながら、知的で純粋な Elizabeth のあいだのロマンスを描き、現在も人気がまったく衰えない名作中の名作です。

21世紀のいまでも、キーラ・ナイトレイ主演で映画化されたり (参照:【映画に学ぶ英会話 2】 使ってみたい会話表現をイギリス映画からピックアップ)、『ブリジット・ジョーンズの日記』の元ネタとして参照されたように、恋愛・結婚・ライバル関係・お金の問題などといったテーマは色あせず、ロマンス好きの読者にとって永遠の必読書といえるでしょう。

2. Kidnapped (Robert Louis Stevenson著 1886)

【おすすめポイント】

  • 元祖アドベンチャー小説
  • スコットランドの豊かな描写
  • 歴史的背景のおもしろさ

『プライドと偏見』がロマンスの元祖なら、エキサイティングな冒険小説の基礎となったのが本書『誘拐されて』です。舞台は18世紀のスコットランドで、悪人の伯父によって奴隷商人に売りとばされそうになった少年が、偶然にイギリス政府のお尋ね者と出会い、ともに逃避行をくりひろげます。

スコットランドは当時、イングランドと統一されておらず、そのため「ハイランド」と呼ばれる地域の独特の文化や言葉づかいが、作中でひんぱんに登場します。『アウトランダー』のような、スコットランドが舞台のドラマにはまれた方には、ぜひおすすめしたい1冊です。

3. The Island of Doctor Moreau (H. G. Wells著 1896)

【おすすめポイント】

  • SFのパイオニア的名作
  • 今だからこそ考えたいテーマ
  • コンパクトな読みやすさ

SFの父祖H. G. ウェルズによる『宇宙戦争』や『タイムマシン』といった作品は、後世に深い影響を与えました。その中でも、遺伝子工学やクローン技術が話題となっている今だからこそ読みたいのが本書『モロー博士の島』でしょう。難破によって主人公がたどり着いた島は、モロー博士と呼ばれる謎の科学者、そして彼の産物である、人間か動物か区別できない生き物たちによって支配された場所でした。

「生体実験(vivisection)」のような倫理的トピックにも触れられ、今も読み応えのあるSFとなっています。また、TOEFLや英検で問われる単語も頻出します。ウェルズの文章はつねに論理的で流れがつかみやすく、英語のテキストとしても重宝するでしょう。

4. Pygmalion (George Bernard Shaw著 1913)

【おすすめポイント】

  • 『マイ・フェア・レディ』の隠れた原作
  • 会話文の多さ
  • 戯曲としての読みやすさ

日本でも大人気のミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作となったのが、ショーによる戯曲『ピグマリオン』です。貧しい花売り娘の Eliza が、ある日言語学者の Professor Higgins と出会い、彼から「正しい英語」を学ぶことを通して、自分のアイデンティティを見つめ直していく物語です。

戯曲であるため、キャラクターたちの会話がほぼ全体をしめており、なおかつ ヒギンズ教授直伝の「エレガントな発音」に、文字を通して触れることができます。映画版のファンや、英語教育に興味がある人なら間違いなく楽しめることに加え、イギリスにおける「言葉づかい」と「社会的ステータス」のかかわりを考える参考にもなるでしょう。

5. Decline and Fall (Evelyn Waugh著 1928)

【おすすめポイント】

  • コンパクトな構成
  • 波乱万丈なコメディ
  • イギリス社会への風刺

イギリスを代表する風刺作家のイーヴリン・ウォーのデビュー作が本書『大転落』です。本作の好評により、ウォーはたちまち流行作家となりました。

オックスフォード大学で神学を学ぶ真面目な学生が、らんちき騒ぎに運悪く巻き込まれてしまったために退学させられ、彼の転落人生がはじまります。

イギリスというと、特に「真面目 (stiff upper lip)」といった印象がありますが、本作はそのようなステレオタイプを打ちやぶってくれる痛快作です。夏目漱石の『坊っちゃん』に見られるようなコメディ要素が楽しめる人にはうってつけでしょう。また、イギリス社会の偽善や、拝金主義などのダークな面が痛烈に風刺されるのも魅力です。

6. The Quiet American(Graham Greene著 1955)

【おすすめポイント】

  • 文豪による傑作スリラー
  • イギリスとアメリカの違い
  • 東南アジアの魅力的な描写

20世紀イギリスを代表する文豪のグラハム・グリーンの特徴は、文学的テーマを「エンターテイメント」という読みやすいスタイルで執筆したことです。その中でもスリラーとして傑出しているのが本書『おとなしいアメリカ人』です。

ヴェトナム戦争前夜の「仏領インドシナ」を舞台とし、現地駐在のイギリス人ジャーナリストと、ある日その地を訪れたアメリカ出身の若者を中心に物語が展開します。話が進むにつれ、そのアメリカ人の隠された危険な目的が明らかとなります。悲劇的なエンディングも読者を魅了するでしょう。「イギリス人」の視点からは「アメリカ人」はどのように見られているのか、という両者の違いを示してくれる、英語学習者にはとても参考になる1冊です。

7. Troubles (J. G. Farrell著 1970)

【おすすめポイント】

  • 「失われたブッカー賞」受賞の人気作
  • イギリスとアイルランドの関係
  • 動乱とロマンスの物語

40代で世を去ったJ. G. ファレルによる本書(邦訳未刊)は、2013年に Lost Man Booker Prizeを与えられ、再評価が高まっている名作です。第一次大戦から生還し、婚約者と再会するためにアイルランドの Majestic という古びたホテルを訪れたイギリス人少佐の視点から、アイルランド社会の隠れた姿が明らかにされます。

1910年代のアイルランドでは、イギリス政府の圧政への反発が広がっており、現地の人々とイギリス出身者のあいだで対立が生じはじめました。これらの「事件 (troubles)」を背景に、ホテルの経営に奔走するイギリス人たちと、彼らを許せないアイルランド人たちの間での全面的衝突へと、物語は展開します。北アイルランドの国境をめぐって抗争が続いている現在、「イギリス連邦」の中にある矛盾を考えさせてくれる珠玉の名作です。

8. The Night Manager(John le Carré著 1993)

【おすすめポイント】

  • 大人気TVシリーズの原作
  • リアルな諜報戦
  • 現実社会とのつながり

スパイ小説の大家ジョン・ル・カレによる本作『ナイト・マネジャー』は、2016年にトム・ヒドルストン主演でドラマ化され大好評となり、日本でもAmazonプライムで人気作となっています。

「世界一のワル(the worst man in the world)」とあだ名される武器商人の Richard Roper と、かつて恋人を彼の手下に殺された元軍人 Jonathan Pine の息詰まる攻防が描かれるサスペンスです。「武器の密輸」という、紛争が絶えない現代でこそ知っておきたい情報が満載のスリラーです。


TV版では現代風にアレンジされ、Jonathan の上司が女性となっていたり、「アラブの春」が背景となっていたりします。一方で原作は、映像では描ききれなかった Jonathan の過去や苦悩、そしてイギリス情報部内での軋轢がしっかりと描写されており、ストーリーをすでに知っていても読みごたえのある1冊です。

9. Atonement(Ian McEwan著 2001)

【おすすめポイント】

  • 戦争と悲劇のロマンス
  • 意外な展開
  • 隠されたメッセージ

本作『償い』の著者マキューアンは、著書の多くがブッカー賞にノミネートされてきた、第一線の人気作家です。第二次大戦時のイギリス上流社会を舞台に、無実の罪で投獄され、さらに戦場へと送られた若者と、彼を愛する恋人、そして彼女の幼い妹の苦しみが描かれます。2007年には、ベネディクト・カンバーバッチを含んだ豪華キャストで映画化されました。

技巧をこらしたスタイルで知られるマキューアンだけあり、ただの歴史小説とは一線を画した意外な展開が見どころです。歴史を語ることから始まり、そのうちフィクションと現実のあいだの境界があいまいとなる、読者を挑発する物語となっています。また、最後にあかされる「つぐない (atonement)」の真の意味は、読者の胸に深く刻み込まれることでしょう。

10. The Sense of an Ending(Julian Barnes著 2011)

【おすすめポイント】

  • 重厚ながらコンパクト
  • 繊細で綺麗な英語
  • ロンドンの描写

マキューアンと並ぶ現代イギリスの大家が、ブッカー賞を受賞した『終わりの感覚』の著者、ジュリアン・バーンズです。本作は2017年には映画化され、そちらも好評を博しました。

60年代を舞台とした前半は学生たちのロマンス、後半部では、かつての恋愛関係がいかにして悲しい人生へと変貌してしまったのかという、老境に入った主人公たちの省察となります。160ページというコンパクトなサイズに深いテーマが読みやすくまとまっており、また「ミレニアム・ブリッジ」 など、現代ロンドンの名所がキーとなる場面で登場するのも魅力です。

まとめ

「イギリス英語」を学ぼうと多読をしたり、映画やドラマを鑑賞してみると、イギリスという国が持つ豊かで多彩な文化や歴史まで楽しめることがおわかりいただけたかと思います。その一方で、『ピグマリオン』に見られるような男女・社会階層の対立や、『ナイト・マネジャー』で描かれているような犯罪など、イギリス社会の負の側面も見逃せないことが明らかになるでしょう。Brexitの行方もあやうい現在、イギリス英語の習得に励みつつ、何がイギリスを現在の大国たらしめているのか考えることも重要ではないでしょうか。

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。

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