世界各国から相撲ファンが訪れる「力山商店・YORIKIRI」の人気アイテムは?英語&日本語で紹介

スポーツであり、日本の伝統文化である相撲。日本を訪れる外国人観光客にも、相撲は非常に人気です。ガラス越しに朝稽古を見学できることで知られる相撲部屋「荒汐(あらしお)部屋」前には、多い日には200名を超える外国人観光客が集まり、熱気ある稽古の様子を真剣に見つめています。

そんな荒汐部屋の斜め向かいにあるのが、2023年にオープンした相撲ショップ「力山商店・YORIKIRI」。稽古日には連日、世界各地からの相撲ファンが訪れます。店主は、先代荒汐親方(元小結・大豊の鈴木栄二さん)の長男で、自身も元力士の鈴木力(りき)さん。オリジナル商品の企画・デザインや、商品のセレクトを担当するのは、姉の真理子さんです。

数あるグッズの中で特に人気の商品や、お二人が考える相撲の魅力についてお話を伺いました。

目次

相撲ショップ「力山商店・YORIKIRI」人気アイテム3選 – 英語&日本語で紹介 –

日本各地、世界各国から相撲ファンが訪れる「力山商店・YORIKIRI」。お店で特に人気が高い商品を伺いました。日本語・英語の両方でお届けします。

※英文は日本語の対訳ではありません。また、本記事の内容は公開時点の情報に基づきます。

1. 相撲のぼり旗を再利用したアイテム

のぼり旗を再利用して作られたバッグ

のぼり旗を再利用して作られたバッグ

店の看板商品が、相撲のぼり旗を再利用して作られたアイテムです。バッグやポーチ、エプロンなどがあり、いずれも鮮やかな色使いが目を惹きます。

大相撲の会場前に立てられるのぼり旗。職人による手作業で作られるものですが、縁起物であるため使い回すことはなく、場所ごとに新調されます。

関取や部屋などに贈られるのぼりは、15日間の場所終了後、贈り主である後援者の元に返されることが一般的です。しかしのぼりは高さ5.4m、幅約90cmという大きさ。手元に戻ってきても、自宅で気軽に飾れるサイズではありません。

「捨てるようなものでもないし、どうしていいかわからない」という声が、商品誕生のきっかけとなりました。

「材料となるのぼり自体が貴重なもので数がそうそう無いので、今のところ商品は全てハンドメイドです。最初は完全に受注生産でしたが、お店に来ていただいた方の『今すぐほしい』というニーズに応えられるよう、今はなるべく、店頭に各商品の在庫が2、3個はあるようにしています。(真理子さん)」

もともと、雨に濡れてもにじまないように作られているのぼり旗。水に耐えられるので、のぼり旗で作ったバッグも、金属などが付いているタイプでなければ洗えるとのことです。

Items Crafted from Repurposed Sumo Flags

These unique items are crafted from repurposed sumo flags, known as ‘nobori’. The items include bags, pouches, and aprons, each featuring vibrant colors.

Traditionally displayed in front of sumo venues, these nobori flags are over 5 meters tall and 90 cm wide. Crafted by artisans, these flags – while valued for their handiwork – are not reused due to their auspicious nature.

Usually, these flags, given to sumo wrestlers and their stables[*], are returned to the supporters who donated them after the 15-day tournament. However, their size often makes them impractical to use, as they are too large even for home display. This led to the creation of these products, inspired by supporters who did not want to discard these significant flags but were unsure of how to utilize them.

Mariko-san, who is responsible for the planning and design of the store’s products, says, “The nobori materials are rare, so all of our products are handcrafted. While they were initially made to order, we now keep a small stock in the store to meet the needs of our customers.”

As these flags are designed for outdoor use, they are rain-resistant and the colors do not bleed. Thus, the bags are durable and washable, except for those with metal or other non-washable components. 

[*] A sumo stable is an organization and training facility where sumo wrestlers live and practice together. As of December 2023, there are 45 stables, and all sumo wrestlers belong to one of them.

1点限定で製作した甚平

のぼりを再利用して作られた甚平(上)

(写真提供:力山商店・YORIKIRI)

のぼりを再利用して作られた甚平(下)

(写真提供:力山商店・YORIKIRI)

お客さんがどんな商品を気に入ってくれるか、まだ分からなかった開店当初。のぼり旗で作った甚平を目にした一人の海外観光客の反応が、商品に対する自信につながったと言います。

「店に入ってきてくれた瞬間に、『これは何?!』っていう感じで。のぼりの写真を見せながら『これは、この相撲フラッグで』と説明したら『ベリーグッド!』って言って。

1点限定の商品でサイズは少し大きかったのですが、『ノープロブレム!』と迷わず買ってくれました。すごく喜んでくれていて、めちゃくちゃ嬉しかったですね。(力さん)」

「ああ、海外の方から見てもやっぱり面白いと、魅力的だと思ってもらえるんだ、って。(真理子さん)」

※2023年12月現在、のぼり旗を再利用した甚平の取り扱いはありません

2. 荒汐部屋の反物グッズ

前述の「のぼりシリーズ」と1、2を争う人気なのが、荒汐部屋の反物(浴衣地)で作られた商品です。

力士の日常着である浴衣。角界では、暑中見舞いのあいさつに加え、昇進・引退時に反物を関係者に配る風習があります。

現在店頭に並んでいる商品は、荒汐親方(元前頭・蒼国来)引退記念の反物で作られたもの。真理子さんによるデザインで、部屋の関取全員(当時)の名前や、部屋名・地名などが入っています。

荒汐部屋の反物で作られたバッグ(エコバッグ)

荒汐部屋のテーマカラーでもある「水色」と「白」の反物。部屋を長年見守ってきた猫ちゃん・ワンちゃんのシルエットも。

バッグやポーチ、くまのぬいぐるみのほか、受注生産のワンピースやアロハシャツも夏場に好評だったそう。「これを着て、夏の名古屋場所を観に行ってくださった方もいましたね。裁縫が好きな方からご要望が多く、反物は切り売りもしています。(真理子さん)」

今後は、他のデザインの反物での製作も予定されているとのこと。

Items Crafted from Arashio Stable’s Fabric

The yukata, often described as a light and casual kimono, is a sumo wrestler’s daily wardrobe. In the sumo world, there is a tradition of giving out yukata fabric to members of the same sumo faction and supporters during midsummer greetings, promotions, and retirements.

The pieces available are made from fabric commemorating the retirement of the Arashio stablemaster (former maegashira Sōkokurai). The designs by Mariko-san feature the names that describe the stable, its local area, and all of its sekitori — the wrestlers ranked in the top two professional divisions, makuuchi and jūryō.

In addition to bags, pouches, and teddy bears, made-to-order dresses and aloha shirts are also popular during the summer.

3. 力士をモチーフにした「こけし」

東北地方発祥の工芸品である、こけし。力士をモチーフとした店オリジナルのこけしは、日本土産として海外の方に人気です。手作りなので、力士の表情やまわしの色が1つひとつ異なる点も魅力。大相撲の儀式に欠かせない水桶と柄杓や、塩も用意されています。

Sumo Wrestler-Inspired Kokeshi Dolls

Originating from the Tohoku region, kokeshi are traditional Japanese wooden dolls. The sumo-themed kokeshi offered by the shop are a favorite of international visitors to Japan. Each doll is individually handcrafted, ensuring that the expressions on the wrestlers’ faces and the colors of their mawashi (sumo belts) are distinctive. The shop also provides miniature sumo ritual accessories, perfectly sized for the dolls, such as a water bucket, ladle, and salt.

海外の方から意外に人気だった商品

また、お二人の予想以上に海外の方から人気だったというのが「のれん」。当初「tapestry(タペストリー)」と表示していたものの、店のご近所に住む海外出身の方からアドバイスを受け、「door curtain(ドアカーテン)」に変更したそうです。

「それで伝わるようになったのか、結構売れ出して。ご近所の方にはいつも助けていただいています。(真理子さん)」

相撲モチーフのアクセサリー

相撲モチーフのアクセサリーは、日本のお客さんから特に人気が高い

【インタビュー】海外からも多くの人を惹きつける、相撲の魅力とは

──部屋の外から稽古を見ている方々が、きちんとルールを守ってどなたも一言も話さず、真剣に稽古を見学されているのが印象的です

力さん:あれは多分、あの場の空気なんですよね。

真理子さん:見学にあたっての注意書きも一応出してはいますが、仮にそれが無かったとしても、自然と喋れなくなる空気感なんだと思います。その分、稽古見学が終わると興奮状態でお店に入って来られる方が多いですね。「すごかった!」「エキサイティングだった!」っていう感じで。

しかも稽古が終わると、まだ泥がついたままのような状態で力士が店に入ってきてくれたりもするので、そうすると皆さんさらに盛り上がります。

写真右、升席で使われていた灰皿(火箱)

店内には商品以外に、相撲の歴史に触れられる品も。写真右は、升席での喫煙が可能だった時代に使われていた「火箱」。

──力士の方たちは、お店によく立ち寄られるのですか

真理子さん:そうですね、「調子どう?」みたいな感じで来てくれたり、買い物をしていってくれたり。真夏にはみんなクーラー目当てに入ってきます。「あー、ここが一番涼しい!」って言って。

力さん:部屋にもクーラー、あるんですけどね(笑)。何となく入ってくるんですよね。助かりますけどね。

真理子さん:お客さんからすると、さっきまであんなに緊迫した空気で稽古していた彼らが、普通に笑ったり、話しかけたりしてくれるのは、ちょっと不思議な感覚なんじゃないですかね。「あ、普段はこんな感じなんだ」って。

力さん:うち(の力士たち)はみんな割とほっこり系だからね。海外の人も、稽古の時とのギャップの大きさは感じているんじゃないですかね。

──海外の方は、どちらから来られる方が多いですか?

力さん:ヨーロッパを中心に、本当にあちこちから来てくれますね。イギリスにフランス、イタリア、オーストラリア、ブラジル、アメリカ・・・。

真理子さん:「そんなに遠いところから?!」と驚くこともよくあります。

──相撲に対する興味・関心が、それだけ大きいのですね

真理子さん:海外の方でも、相撲についてものすごく詳しい方も時々いらっしゃいますね。

力さん:他にない、独特の世界ですからね。全部が不思議で、「これは何ですか」「あれは何ですか」という感じなんだと思います。

真理子さん:相撲ってやっぱり生で見ると緊張感があって、他にない空気感なんですよね。舞台とも、他の格闘技とも違う空気。力士のみんなが24時間365日を相撲に捧げているところが、その空気感を生んでいるんじゃないかなと思います。「力士」という存在感を。

大銀杏のディスプレイ

関取の髪型「大銀杏(おおいちょう)」。「床山(とこやま)」と呼ばれる職人によって結われる。

──たしかに、初めて国技館に行ったとき、日常で味わったことのないような空気を感じました

真理子さん:生でみると、違いますよね。格闘技ではあるんだけれど「神に捧げる」というところが始まりだから、きちっとした形式に沿って粛々と進める。それでいて、やっていること自体はものすごく激しい。その神秘性みたいなものは、海外の方も感じるんじゃないかな。

──お二人から見た、相撲の魅力とは

力さん:先代もよく言ってるんですが、「相撲をやめてからも世間の人に失礼がないように育てる」というのは、相撲部屋の良さだと思います。

相撲部屋に入った人間がまず教わるのは、挨拶や礼儀の部分なんです。もちろん相撲って強くなってナンボじゃないですか。総勢何百人の力士の中ではい上がって、番付を上げて、「関取になるのが夢です」「横綱になりたいです」っていう、ある意味わかりやすい世界ですよね。だけど、全員はもちろんなれない。なれるのは、ほんの一部です。

でも、相撲では強くなれなくても、人としてしっかり育てれば次の世界に行ってもやっていける。だから親方は力士たちの「親」として、力士の心技体を鍛えて、人として成長させるんです。相撲の魅力っていうと、そこに尽きるんじゃないかな。

真理子さん:私も外からみんなを見ていて、そこが1番だと思いますね。魅力は他にも色々あるけれど、その魅力がなぜできるのか、なぜ人がそれを魅力的に感じるかというと、根本的なところがあるからだと思います。

──初心者が相撲を好きになるためのきっかけや、おすすめの注目ポイントは

真理子さん:まずルールが複雑じゃないので、誰が見ても勝ち負けがわかりやすいですよね。あとは、「行司さんの装束が綺麗」「化粧まわしがゴージャスで、色んな柄がある」とか、そういうところから入っても面白いんじゃないでしょうか。

そうすると、観ているうちにだんだん「どうやらこの人はすごく強いらしい」とか「新しく上がってきたこの人は、結構キャラが良さそう」とかが分かってきて、ちょっとずつ、相撲の沼にはまっていくんじゃないかなと思いますね。


遠くから店を訪れるお客さんたちに喜んでもらえるよう、「なるべく他にない商品を」と試行錯誤を続けているというお二人。素敵なアイテムの背景にあるストーリーを知ると、ますます愛着がわきます。のぼりや反物で作られたバッグや、相撲モチーフのアクセサリーなどは、出会った人との会話のきっかけづくりにも一役買ってくれそうです。

奥が深く、知らないことが沢山ある相撲の世界。番付表に書かれた文字や、土俵上の力士の所作など、ふとした「これは何?」「なぜ?」が熱中の入り口となるかもしれません。

力山商店 SUMOSHOP YORIKIRI

  • 住所:〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町2-46-8
  • 営業時間:10時~17時。荒汐部屋の朝稽古がある日は、7時半~15時。東京場所中は、9時~17時。不定休

※朝稽古のスケジュールは、荒汐部屋のホームページをご確認ください。

※当日のオープン状況など、最新情報については「力山商店 SUMOSHOP YORIKIRI」Instagramをご確認ください。

 

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Asami

医薬品メーカーで6年勤務後、NYへ。1年を過ごし、NYの街と、そこで暮らす人のエネルギーに魅了され、英語を磨きたいという思いが高まる。帰国後は、英語コーチングスクールでビジネスパーソンを対象に指導経験を積んだ。TOEIC990点。

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