留学や駐在など、海外での生活に憧れはあるものの、「英会話力が不安」という方もいるでしょう。
英語を長年勉強していても、リスニングやリーディング以上に、スピーキングに苦手意識があるという方は少なくありません。「英語を話すのが怖い。緊張する」「周りの人に、自分の英語を聞かれるのが恥ずかしい」といった悩みは、英語初級者に限らず、よく聞かれます。
そこで今回は、英語に対する強い苦手意識を乗り越え、現在は音楽業界で英語を使って働きながら、ライターとしても活動するりみさんにインタビューを実施。英語に対する恐怖心との向き合い方や、英語を話す際の具体的な準備方法、日常生活で英会話の機会を増やすコツなどについて伺いました。
短期ダンス留学をきっかけに英語に興味を持ち、英語力ゼロで長期留学を決意。TOEFL50点、英検2級を取得。アメリカ・ロサンゼルス留学を6年(語学学校3年、ミュージックカレッジ2年、就職1年)し、帰国後は、習得した英語を使いながら音楽会社に勤める。帰国後も、習得した英語を忘れないように、英語を生活の“一部”にするように心がけている。
「英語を話すのが怖い」を乗り越えるには?留学経験者が実践する準備と工夫
「英語に対する恐怖心」との向き合い方
Q:英語を話すことに対して、緊張や不安を感じた経験はありますか?
英語を学ぶことに対する恐怖心
私の場合、「英語を話すこと」に対する抵抗以前の問題で、「英語を学ぶこと」にも恐怖心を抱いていました。
子どもの頃は検定を取ることが趣味だったのですが、「もし、テストでいい結果がでなかったらどうしよう」というプレッシャーが、英語を学ぶことへの恐怖心につながっていきました。
また、その人が英語をどれくらい話せるか、聞き取れるかは、話し方や雰囲気などから、周りの人も意外とすぐ分かるものですよね。学んだ内容を自分が吸収できずに、他の人から「勉強しているのに全く英語話せないじゃん!」と思われるのでは、という怖さがありました。
しかも、たとえばピアノのような習い事とは違って、英語は誰もが一度は学ぶものです。友人や同級生全員が経験している中、他者との差がはっきり見えてしまうのが嫌でした。
「単語や文法を間違えたら恥ずかしい」という気持ちや、自分が本来言いたかったことが伝わらずに、誤解を招いてしまうかもしれないという不安もありましたね。
「基礎を学ぶ自分」を受け入れられなかった
幼少期にはアメリカのカートゥーンを観たり、洋楽を聴いたりしていたのですが、思春期になると、英語を勉強している自分がカッコ悪く思えてきてしまいました。
英文を読んでも、文を目で追いかけているだけで、内容を全然理解できない。何事も最初はできないのは当たり前なのに、「基礎を学ぶ自分」を受け入れられませんでした。英語学習を拒絶するようになり、中学や高校時代には、英語をまともに勉強せずに過ごしました。
英語を学ぶ以外の選択肢がない環境へ
子どものころの海外旅行の経験から、海外自体には興味があり、「いつか一人で海外へ行ってみたいな」とぼんやり思ってはいたのですが、それでも英語を勉強せず・・・。
考えが変化したのは、19歳の頃に、英語が全く話せないのにも関わらず、アメリカに1ヶ月間、ダンスの短期留学をすることになったときでした。
渡米直前まで、「日本語ですら、知らない単語や表現があるのに、第二言語なんて学べない」と、心の中で英語学習に反抗していましたが、現地ではそんなことは言っていられません。恐怖心があろうと、「ここで生きていくためには、英語を学ばなければいけないんだ」と実感し、そこから英語学習を始めました。
※りみさんの学習の軌跡については、英語を使って音楽業界で働くには? アメリカで働くりみさんにインタビューを参照ください。
Q:現在は、英語を話すことに抵抗はありますか?
恥ずかしながら、今も抵抗はあります!
特に、自分よりも英語が話せる日本の方の前で、ネイティブスピーカーの方と会話する時には、抵抗があります。日本の方に、「英語表現が間違っている」と思われるのでは、と思ってしまいますし、ネイティブの方に自分の英語を理解してもらえなかったらどうしよう、と心配にもなります。
6年英語圏に住んでいても、話し続けないと忘れてしまいますし、まだまだ英語力が足りないと感じています。でも、たとえ文法や単語が多少正しくなくても、相手に自分の思いがきちんと伝われば問題ないので、恐怖心があっても、覚悟を決めて伝えるように努めています。
英語を話す際の準備と工夫
Q:現在、英会話の際に、困ることはありますか?
緊張する環境での英会話は、知っている単語やフレーズであっても、とっさに出てこなかったりします。会話が終わった後に思い出して、「知っていたのに!」と、悔しい思いをすることもしばしばです。
英語を話す日は、トピックを想定して一人で予行練習
仕事で英語を話す場合は、事前に「今日は、こういうことを話しそうだな」と想像し、一人で声に出して、会話の予行練習をします。それでも、慣れない環境での英会話は難しいと、いまだに葛藤していますが。
ちなみに、おすすめの予行練習場はお風呂です。シャワーを浴びている時は誰にも聞かれず、恥ずかしさもないので、最高の練習スポットです!(笑)
Q:英語でコミュニケーションをとる際、心がけていることはありますか?
特に意識しているのは、発音です。グラマー、単語、フレーズが合っていても、発音が間違っていると、相手に理解してもらえないことがあります。正しく発音して初めて相手に伝わるので、速く話そうとするのではなく、一つ一つの単語を丁寧に発音するよう心がけています。
また、国によって英語のアクセントが異なるので、自分が学んでいた国の英語でない場合は、より集中してリスニングするようにしています。私の場合、アメリカに留学していた為、たとえばイギリスやオーストラリアの方とコミュニケーションを取るときには、アメリカの方と会話をする時以上に、聞き取りを意識するようにしています。
日本人学習者にとって、英会話の最大の壁とは
Q:英語で会話する際に、特に大切なスキルは何だと思いますか?
恥ずかしがらずに、英語でコミュニケーションを取れる力です。
もちろん、相手が何を言っているのかが分からなければ、返答はできないので、単語力や文法力を含めたリスニングスキルも重要です。でも、多くの日本人にとって、それ以上に大きな壁になっているのは、気持ち的な問題だと感じます。
留学者の中にも、相手からの質問に対する答えは分かっているのに、恥ずかしさから、なかなか英語が出てこないという方は少なくありません。自分の殻を破ることが大切です。
Q:自分の殻を破るための、具体的な方法・コツなどはありますか?
これは、気持ちの切り替え一択のように思います。
私も経験上、留学初期には、「ああ言えばよかった」「あの時こういうこと言えたよなあ」と後悔することが、毎日のようにありました。
チャンスがあるのに逃してばかりで、いつになっても成長できない。「このままだと一生後悔する。間違えて恥ずかしいのは一瞬だけれど、英語を話せるようにならなくて後悔するのは一生だ!」ということを、常に頭の片隅に置いて生活するようにしました。そうしたら、気がついた時には、勝手に殻を破れていました。
Q:「英語が苦手で、話すのが怖い」という方に、アドバイスはありますか?
焦らずに、相手に伝わるように、ゆっくり、はっきり発音することです。
ネイティブスピーカーの英語を聞くと、話すスピードが速いので、つい焦ってしまいがちです。でも、大切なのは自分の考えを相手に伝えることなので、落ち着いて、丁寧に、一つ一つの単語を発音することを心がけてみてください。会話を始める前に、深呼吸するのもおすすめです。
そして、心の準備も大切です。先ほども述べた通り、私自身、英語を話すと分かっている日には、出発準備をしながら、トピックの想定をして独り言のように話し続けます。
また、「英語脳」にすることも、英語を話す上で大切だと感じています。日本で生活していると、テレビも音楽も聞こえてくる声も、基本的には全てが日本語ですよね。英語をたくさん話す日は、移動時間中に洋楽を聴いたり、英語のニュースを観たりして、事前に英語脳に切り替えるようにしています。
日常生活で英会話の機会をつくる方法
Q:日常生活の中で、英語を話す機会をつくるために、工夫されていることはありますか?
まず、海外にいた時は、特に予定がない日でも、積極的に外出するようにしていました。
たとえば、食料品の買い出しでスーパーマーケットを訪れたときには、探している食材の場所が分かっていたとしても、「Excuse me. I’m looking for 〜.(すみません、~を探しているのですが)」のように店員の方に声をかけて、一日一回は必ず、英語でコミュニケーションを取るようにしていました。
日本国内の場合は、外国人観光客や、日本に駐在されている方など、海外の方が多く集まるエリアを定期的に訪れるようにしています。
英会話力を向上させるための近道は、やはり、実際に英語でコミュニケーションを取ることです。日本にいると、「なかなか英語を話す機会がない」「学んだ英語をどこで活かせるだろうか」と悩んでいる方もたくさんいると思います。でも、意外と日本にも、海外気分を味わえるスポットや、英語を話せる場所があります。
東京の場合、大使館が多くある港区は、英語学習者の方に特におすすめのエリアです。詳しい場所については、日本にいながら海外の雰囲気を味わえる、英語学習者おすすめスポット5選 – 東京編 –でご紹介しているので、ぜひチェックしみてください。
Q:帰国後も、「積極的に英語を話そう」と意識されている理由・モチベーションは、何でしょうか
「せっかく身につけた英語力を下げたくない」というのはもちろん、今後は今以上にグローバル化が進み、英語が話せて当たり前の世界になっていくと思うので、自分の仕事の幅を広げるためにも、そして、何より留学中にできた世界中にいる友人といつでもコミュニケーションが取れるように、積極的に英語を話そうと努力しています。
時々、英語を話したくなくなる時もありますが、そのような時は、Netflixの日本映画やドラマに英語サブタイトル(※)を付けて英訳を見るなど、グラマーやリーディング力の向上に努めています。私の場合、無理やり勉強しようとすると、英語学習のモチベーション自体が下がってしまうので、自ら話そうと思えるまで無理に話そうとはしていません。
※編集部注:英語字幕の有無は、作品により異なります
また、海外の方と話すと、日本以外の文化を知ることができるので、常に発見があります。一度勇気を出して海外の方と話すと、コミュニケーションを取ることが楽しくなり、もっと話したいと思うようになるので、自然とモチベーションが上がります!
インタビュー後記
音楽会社に勤務し、世界中のクライアントと英語でやり取りをされてきたりみさん。
海外経験を経た今も、英語を多く話す機会には「会話のトピックを想定して、一人で予行練習」「洋楽や英語ニュースに触れ、事前に『英語脳』に切り替える」など、しっかりと準備を行われているのが印象的でした。
英語でのコミュニケーション力を高めたいと考えている方は、ぜひ、りみさんのアドバイスの中から、まずは1つ、何か取り入れてみるのはいかがでしょうか。
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English Hub 編集部
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