外国人と日本語で会話していると、悪気はないとは分かるものの、相手の言葉づかいが少し失礼であるように感じた経験はありませんか?これは、我々日本人がネイティブと英語で話すときにもしばしば起こる現象です。今回は、ネイティブをイラッとさせる日本人の”Can you ~?”の使い方について解説するとともに、より場面に適した表現をご紹介します!
”Can you eat ~?”と尋ねる日本人の心理
外国人と食事をする際、日本食の中で何か苦手なものがないかを尋ねようとして、”Can you eat ~?”を使って下記のように質問をしていませんか?
注意が必要な表現例
- Can you eat Sashimi(raw fish)? 「刺し身(生魚)を食べられますか?」
- Can you eat Natto? 「納豆を食べられますか?」
これは日本語の「○○を食べられますか?」を英語に直訳して、”Can you eat ~?”という表現を使っていると考えられます。
日本人同士の会話なら、「○○を食べられますか?」と尋ねるのは、相手を気遣ってのことですよね。質問された側は、以下のように返すことが多いのではないでしょうか。
<例>
「○○は大好きです」
「○○はちょっと苦手です」
「○○はあまり好きではありません」
つまり、日本語の「○○を食べられますか?」という質問には、「〇〇が好きか嫌いか」、「〇〇を食べたいか食べたくないか」というニュアンスが含まれていることが分かります。
”Can you eat ~?”と尋ねられるネイティブの心理
一方、ネイティブにとって”Can you eat ~?”の意味合いは異なります。そのため、ふさわしくない場面で”Can you eat ~?”を使うと、相手に対する気遣いが伝わるどころか、時にはイラッとさせてしまうこともあります。たとえば、”Can you eat Sashimi?”という質問に対する英語での答えは、’Yes, I can’ もしくは’No, I can’t’ のいずれかです。ネイティブにとっての”Can you eat~?”は、文字通り「食べられるか食べられないか」、つまり「可能か不可能か」という問いなのです。
‘I can’という答えは「可能」を示してはいますが、ここで注意しなければいけないのは、「食べられる」は「食べたい」とイコールではないということです。’I can’と答えていても、「食べられるが、特に食べたいわけではない」「食べられるが、全く好きではない」という場合もあります。’I can’の言葉から判断できるのは、あくまで「可能」であるということだけです。コミュニケーション上で誤解を生んでしまうこともある表現であるため、使う際には注意が必要です。
相手への気遣いをあらわす表現
より自然に「○○は食べられますか?」と相手の好みを尋ねるには、下記のように表現しましょう。
より良い表現例
- Do you like Sashimi? 「刺し身が好きですか?」
- Would you like to (try to) eat Sashimi? 「刺し身を食べてみますか?」
- Have you ever eaten Sashimi? 「刺し身を食べたことがありますか?」
注意が必要な”Can you do ~?”の使い方は、他にもあります。いくつか例をみてみましょう。
注意が必要な表現例
- Can you sit on the floor? 「床に座れますか?」
- Can you use chopsticks? 「お箸を使えますか?」
- Can you sleep on the Futon mat? 「お布団で寝られますか?」
これらの表現も、相手を気遣う際に使いたくなる表現です。しかし、尋ねられた側の立場からすると「私たち(日本人)は、~することができるのよ!あなたはできるの?」と見下されたように感じる場合もあります。相手を気遣う思いを伝えたい場合には、以下のような表現を使うようにしましょう。
より良い表現例
- Don’t you mind if we sit on the floor? 「床に座るけど、構いませんか?」
- Do you prefer using a fork? 「フォークの方がいいですか?」
- I hope you are comfortable to sleep on the Futon mat. 「お布団で快適に眠れるといいのですが」
誤解が生じる理由~高文脈文化と低文脈文化~
日本人同士の会話であれば通常、言葉ではっきり言わなくても、相手の質問の意図や気遣いに気づきます。これは、日本の文化が、言語以外の状況や文脈から話し手の意図を察する高文脈文化(high-context culture)であるためです。一方英語圏の国々は、言葉そのものを重視する低文脈文化(low-context culture)です。そのため英語では、日本語のように発せられた言葉から何かを察するということはほとんどありません。
一例をみてみましょう。
<例>
ネイティブ:What would you like to eat for dinner? 「夕食に何が食べたい?」
日本人:Whatever. 「何でもいいよ」
ネイティブ:Ok, how about Chinese? 「中華料理はどう?」
日本人:I don’t feel like Chinese. 「中華料理って気分じゃないな」
上記の会話では、日本人が「何でもいい」と言っておきながら、具体的な言及をされると「それは嫌」という意思を示します。ネイティブからすれば、「何で聞いたときに言わないの?」と感じますが、日本語での会話としては誤解が生じるほどのものではありません。しかし、日本人のこのような態度は、ネイティブには時として優柔不断に映ります。英語で会話するときには、日本語で話すとき以上に言葉で明確に伝えることを意識しましょう。
まとめ
お互いの文化を理解し、状況に適した表現を使うことは、英語をただ流暢に話すこと以上に重要です。なぜなら、文化的背景を理解していないと、どんなに綺麗な発音や完璧な文法で話しても、なかなかお互いの距離を縮めることはできないからです。言語は文化の一部です。文化を学ぶことで言語の習得は加速します。英語で何かを伝えるときには、一つの「直訳」だけではなく、複数の表現を考える習慣を身につけ、相手に思いがより伝わるように表現の幅を広げていきましょう!
reisuke
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