映画を見ることで、テキストやレッスンに縛られない、リアルな英語表現を身につけることができます。とくに「ラブコメ(romantic comedy)」を中心とした恋愛映画では、ストレートな感情表現に加え、ニュアンスに富んだコミュニケーションも多用されているので、英語学習者にとって有益なヒントが満載です。
今回の記事では、ロマンス映画を中心として、日常の英会話で活用できる様々な表現を探っていきたいと思います。せっかく英語を学ぶならば、ぜひとも文法力や単語力を裏付けするための感情表現を身につけることを目指しましょう。
1. Bridget Jones’s Baby (2016)
レニー・ゼルウィガー主演で旋風をまきおこした『ブリジッド・ジョーンズの日記』シリーズ完結編が、第3作『ダメな私の最期のモテ期』です。本作では、TVプロデューサーとして活躍するブリジットがうっかり妊娠してしまい、その子の父親が誰かをめぐって騒動が巻き起こります。
ここで、ブリジッドが自身の生活を解説するセリフを見てみましょう。
- Still, not to dwell on the negatives, many positives to note. […] And my love life is showing signs of improvement. (動画0:33~1:07)
まずは、下線部の“dwell” という単語について考えましょう。普段は “dwell in~” で「住む」という意味で使われ “dweller” では「居住者」となります。しかし、ここでは「くよくよ考える」という意味で使われています。そのため “dwell on the negatives” は「ネガティブ思考におちいる」となります。
応用例を考えてみましょう。
- A: I said sorry to him hundred times, but he’s still pissed!
(何回もあやまったのに彼はまだ怒ってるの!) - B:He’d better stop dwelling on that silly trouble. Otherwise you should find someone better!
(あの男はその件でウジウジするのをやめるべき。じゃなかったら新しい相手を探したら?)
このように、ネガティブなことが起きて「相手にアドバイス」するようなときに重宝する表現です。「クヨクヨしないで」というニュアンスを伝えることができます。
つぎに “showing signs of improvement” という箇所に注目しましょう。まず、日本語での「サイン(署名)」は “signature” となるので、その違いに気をつけてください(参照:「日本語と意味が異なる英単語8選!」)。ここでの “sign” は「きざし・兆候」という意味なので、このフレーズは「向上のきざしを見せている」となります。
以上をふまえて、以下の例を見てください。
- A: He helped me fix the computer and order office supplies yesterday.
(きのう彼は私のパソコンを直して、備品の注文まで手伝ってくれたの) - B: That might be a sign of his affection for you!
(それってあなたに気があるってことじゃない?)
このように “sign” という言葉を使えば、気がある「かもしれない」という「兆候」をさりげなく表現することができます。「もしかしたら〜かも」という場面でぜひ使ってみましょう。
2. Sense and Sensibility (1996)
①で取り上げた『ブリジット・ジョーンズ』の元ネタは、19世紀ロマンス作家のジェーン・オースティンによる物語です。ここで、本家のオースティンの『 Sense and Sensibility (邦題:分別と多感)』を原作とした『ある晴れた日に(Sense and Sensibility)』に注目しましょう。『タイタニック』のケイト・ウィンスレット、『ラブ・アクチュアリー』のヒュー・グラント、そして『ハリー・ポッター』のスネイプ役で人気のアラン・リックマンが顔を揃えた傑作です。
まず英語タイトルにある “sense” と “sensibility” という2つの言葉を見てください。主人公となる、分別 (sense) のある姉のマリーと、多感 (sensibility) な性格の妹エレノアをあらわしたタイトルとなっています。
日本語では「センス(感性)のある・ない」というように使われますが、英語の “sense” は主として「意味・理性・感覚」という意味で用いられます (参照: https://www.merriam-webster.com/dictionary/sense)。たとえば “make sense” は「意味を作る=理解可能となる」という熟語となります。
いっぽうの “sensibility” は “sense + ability” なので「感じることができる=多感である」となります。これを形容詞にすると “sensible” (sense + able) で「良識が可能=常識をわきまえている」という意味となります(副詞型は “sensibly” です)。
ここで、これらの言葉の違いを明確にしておきましょう。
- A: He said he loved me yesterday, but today he says he likes another girl. That makes absolutely no sense!
(彼って昨日は私のことが好き、今日は他の子が好きだっていうの。本当に意味不明!) - B:Well, some men cannot act sensibly.
(だいたいの男って常識がない/気をつかえないから)
このように “sense” という言葉とその派生形をおさえておくと、様々な表現が可能になります。19世紀イギリスの華麗なロマンスを楽しみながら、ぜひ会話のレパートリーに加えてみてください。
3. Knocked Up (2007)
ここで19世紀イギリスから、21世紀アメリカに視線を向けて『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』を取り上げてみます。アメリカのコメディ界を代表する俳優の一人セス・ローゲンが主演で大ヒットしたラブコメで、『アントマン』で日本でも人気のポール・ラッドが脇を固めている魅力作です。
ここでタイトルの “knock up” (参照:https://www.merriam-webster.com/dictionary/knock%20up)という表現を見てみましょう。日本語では「ゲーム用語」としても使用されているようですが、本来は「(不本意に)妊娠させる」という意味となります。その際に「できちゃった婚」となるケースも考えられますが、それは “shotgun marriage”という英語で表現できます。「妊娠した交際相手の父親が、鉄砲を振りかざして男性に結婚を強要した」という逸話からできた、いかにもアメリカらしい面白いフレーズです。
ここで「妊娠している (pregnant)」という言葉に注目して、動画 1:04~1:10のセリフを見てください。
- Alison: I have something I really need to tell you. I’m pregnant.
- Ben: With the baby?
- Alison: Yes!
「私は pregnant なの」と言われたベンは、「赤ん坊を pregnant してるってこと?」と聞き返します。日本語では当たり前のように聞こえますが、英語の “pregnant” には様々な意味(参照:https://www.merriam-webster.com/dictionary/pregnant)があるので、一瞬ベンが混乱してしまうのがここでのジョークです。
まず “pregnant” の様々な使用例を見てみましょう。
- Her face was pregnant with joy.
(彼女の表情は、よろこびに満ちていた)
- After he left, her life has become pregnant with utter desolation.
(彼が去ったあと、彼女の生活は孤独きわまりないものとなった)
このように “pregnant” という言葉の幅広さを理解してこそ、このワンシーンが楽しめるようになります。シンプルな単語の多様な意味を探りつつ、英語でのジョークを楽しめる感性を磨きましょう。
4. The Graduate(1967)
最後に、アメリカを代表する恋愛映画のひとつ『卒業』をご紹介します。サイモン&ガーファンクルによるサウンドトラック)を通しても名高く、オスカー俳優ダスティン・ホフマンの出世作となった、アメリカン・ニューシネマの傑作です。また、男女問わず楽しめることも大きな魅力です。
名門大学を優等で卒業しながらも、人生で何をなすべきかに戸惑う若者ベンジャミンの苦悩、そして彼を誘惑するロビンソン夫人と娘のエレインが、物語の中心となります。そのなかで、ロビンソン夫人と二人きりにされたベンジャミンによる次のセリフ (動画0:05) は広く知られています。
- Benjamin: Mrs. Robinson, you are trying to seduce me…aren’t you?
ここで “seduce” という言葉にまずは注目しましょう。「誘惑する」というのが主な意味ですが、「たらしこむ」という一般的な意味としても使える便利な単語です。
- A:Why did you marry him? You never liked that man.
(どうして彼と結婚したの?好きじゃなかったんでしょ?) - B: I was seduced by his wealth and social standing.
(富と地位には勝てなかったの)
また、次のような例も考えられます。
- This bar is dangerous. It seduces customers by false advertisements, then rips them off.
(虚偽の広告で客を引き寄せておいて、ぼったくるんだ)
次に、ベンジャミンのセリフの「全体的な効果」について考えてみましょう。
“You are trying to…(aren’t you)?” という言い方をすることで「〜しようとしているんでしょう」と、「相手の真意を問う」表現として使うことができます。
- A:My new boyfriend is fantastic! He is taking me to Europe next month.
(彼って最高!来月、ヨーロッパに連れて行ってくれるの) - B:You’re trying to make me jealous, aren’t you?
(私を嫉妬させようとしてるんでしょ?)
このように、やんわりと相手をたしなめる言い方として使うことができます。とくに、相手にカチンときたけれども、ケンカは避けたいときに便利な表現だといえます。
まとめ
本記事では、古今のラブコメや恋愛映画を取り上げつつ、日常で活用できる様々な表現や、意外な言葉の意味を見てみました。ロマンスを描いた映画では、「言葉のあや」や「繊細な表現」が工夫を凝らして使用されています。特に、場をなごませるためのユーモアや、ダイレクトには聞きにくい質問の表現方法などが参考となります。作品から学んだ洗練された表現をさっそく明日からの英会話に活用してみましょう!
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茂呂 宗仁
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