【映画に学ぶ英会話 7】アクション映画ヒット作から役立つ英語表現をピックアップ!

「映画から英語を学ぶ」ことは、教科書などからはなかなか学べないような表現方法を吸収するために役立つプロセスです。「教科書では学べない英語」とは、「卑語」や「スラング」だけを指して言ったわけではありません。一般のテキストではなかなか伝えられないような「レトリック」や「話し方」を含む、英語を通して豊かに自己表現するコツだと考えてください。

ここでは、広く人気のあるアクション映画から、英語表現を広げるために有益なコツを拾い出していきたいと思います。アクション映画のキャラクターたちは、しばしば強い個性を持っています。そんな登場人物の話し方に注意すれば、どのように英語で自己主張を効かせるかを学ぶことができるでしょう。

1. 『007/スペクター(Spectre)』(2015)

英国スパイのジェームズ・ボンドが活躍する007シリーズは、2019年現在25作目の制作開始が報じられています。ここで、2015年に公開されて世界的なヒットとなった24作目の『スペクター』を振り返ってみましょう。

本作では、スペクターの首領で宿敵のブロフェルドとボンドがついに対面します。アフリカに隠されたスペクターの基地にボンドが潜入した際に、彼らがかわす会話を見てみましょう。(動画00:35 ~)

  • Blofeld: Why did you come?
  • Bond: I came here to kill you.
  • Blofeld: And I thought you came here to die.
  • Bond: Well, it’s all a matter of perspective.

ここで、ブロフェルドの「死ぬために来たのではないかな」という脅し文句に対するボンドの返し方 (“It’s all a matter of perspective”) に注目してみましょう。

perspective” という単語は、「遠近法」や「(物の)見方」といった意味があります。ここでの使用法は「どうそれを見るのかによる」という意味になります。したがって、ボンドが言わんとしているのは「殺しに来たか、死に来たかは、単に見方の問題でしかない(=お前の言うことは、ただの一意見に過ぎない)」という大胆な挑発になります。

次の会話は、これを日常会話に応用してみた一例です。

  • A: I don’t like recent music. Today’s pop is shallow and empty.
  • B: But their music is so fun and creative. Look at the K-pop singers!
  • A: You might have a point there. I guess it’s just a matter of perspective.

ここで、Kポップ好きのBに対してAは、ダイレクトな反論やけんかを避けるために「見方の問題にすぎないのかもしれない」と言います。この返し方は「譲歩」とも受け取れる一方、「私には私のものの見方がある」という自己弁護でもあります。

このような会話を支えているのは、一人ひとりが「自分の意見を持つ権利がある」という西洋的な平等主義でしょう。えてして他人の意見に追従しがちな日本文化からはなかなか出てこない言葉とも言えます。この “a matter of perspective” という表現を通して、英語でコミュニケーションするにあたって大切な考え方をおさえておきましょう。

2.『ミッション・インポッシブル/フォールアウト(Mission: Impossible – Fallout)』(2018)

トム・クルーズ演ずるイーサン・ハントが活躍する『ミッション・インポッシブル』の最新作『フォールアウト』は、2018年にシリーズで最大のヒットを記録し、ファンと批評家から高い支持を得たことも記憶に新しいでしょう。本作ではアメリカ情報局 (CIA) から送られたエージェント、ウォーカーが意外な展開のキーとして活躍します。

シリーズのファンならご存知のように、ハントは過去に何度もみずからの組織から裏切られてきました。それを踏まえて、ウォーカーはCIA長官であるエリカに次のように主張します。(動画01:18 ~)

  • Walker: How many times has Hunt’s government betrayed him, disavowed him, cast him aside? How long a man like that has had enough?

ここでウォーカーが用いているのは、疑問文を通して自分のポイントを主張する、という英語話者がしばしば使うレトリックです。「彼は自分の政府にいままで何度裏切られ、見捨てられてきたのですか?」と尋ねることで、ウォーカーは「ハントが政府を裏切っても当然だ」と間接的に述べているのです。

ここで、日常会話への応用例を考えてみましょう。

  • A: How many times have I told you that drinking is bad for your health?
  • B: Well, drinking helps me relax. It’s just a matter of perspective.

ここでAは「飲酒は健康に悪いと何度言ったと思うの」と尋ねることで、自分のポイントを強調します。それに対しBは、先に解説した “a matter of perspective” を用いて、アルコールの害をうやむやにしようとしています。

さらに、ウォーカーの2番目の発話 (“How long a man like that has had enough?”) に注目してみましょう。ここでの “have had enough” は、「十分に得てきた」から転じて「うんざりする」という意味となります。次の例を見てください。

  • A: I’ve given her nice presents, taken her to fancy restaurants, but she still treats me like a stranger. What can I do?
  • B: You should have had enough by now. It’s time to move on.

ここで途方にくれるAに対して、Bは「うんざりする・あきらめる潮時だよ」とアドバイスしています。このように「忍耐してきたけれど、もう無理!」というような状況で便利な表現です。

3.『デッドプール2(Deadpool 2)』(2018) 

『X-MEN』シリーズのスピンオフ『デッドプール』は、強烈なアクション描写とドライなユーモアが大受けし、大ヒット作となりました。2018年には続編が公開され、再び世界的ヒットを飛ばしましたが、ここでデッドプールの人気を支えるユーモアのエッセンスに挑戦してみましょう。

未来からタイムトラベルで現れ、家族を殺した敵を子供時代に退治しておこうとするケイブルが本作での悪役です。進歩したテクノロジーで圧する彼に対し、ウェイド/デッドプールは、自分のようなミュータントを集めて対抗しようとします。(動画01:28)
※本作はR指定を受けており、バイオレンス描写等が苦手な方には視聴をお勧めしません。

  • Deadpool: We’re gonna form a super-duper […] group. We need them tough, morally flexible, and young enough to carry their own franchise for 10 to 12 years.

まずは “super-duper” という最近よく使われるスラングを見てみましょう。これは「超すごい」という意味で“incredible” や “fantastic” の代わりに使えます。例としては…

  • A:So you aren’t single anymore?
  • B:You must meet my new, super-duper boyfriend! He’s so smart, tall and handsome!

というように使えます。

次に、“morally flexible” (道徳的にフレキシブルな・融通のきく)という表現に注目しましょう。自らも悪人と受け取られかねないことを平気でやってのけるデッドプールですが、彼がチームに期待するのは「モラルを曲げられる」ような人材です。

ここで “副詞 + flexible” を用いた表現を考えてみましょう。

  • A: Who should we send to the new branch in India?
  • B: How about Narumi? She has travelled a lot since childhood. I suppose she is culturally and gastronomically flexible.

ここでは「文化的に・胃腸的にフレキシブル」ということで、「異文化や、そこでの変わった食べ物に対応力がある」という表現として成立します。

最後に“young enough to carry their own franchise for 10 to 12 years” というギャグを見てみましょう。MARVELなどに見られるように、フランチャイズ化によって長期間にわたって利益をあげる傾向を皮肉った発言です。ここで “形容詞 + enough to do” を使って皮肉るやり方を考えてみましょう。

先に “super-duper” で用いた例文を発展させてみます。

  • A:You’ll love my new, super-duper boyfriend. He’s so smart, tall and handsome!
  • B: And is he rich enough to satisfy your insatiable materialism?

Bの返答は「あなたの物欲 (materialism) を満たせるくらいリッチなの?」と、Aのナイーブさを皮肉にたしなめる表現になっています。皮肉をこめて相手に反論したい場合、重宝できる表現でしょう。

まとめ

以上、昨今の人気アクション映画3作を通して英語の様々な表現法をご紹介しました。優れたアクション映画は、アクションシーンだけでなく、気の利いた会話が魅力の作品が多く、それが007シリーズの根強い人気などに反映されています。アクション映画には、登場人物の性格が簡潔に投影されたような表現が多く見られます。好きなキャラクターの話し方をマスターすることで、自分もヒーローになったつもりで英会話をしてみるのも楽しいに違いありません。

【関連ページ】【映画に学ぶ英会話 3】「ミッション:インポッシブル」シリーズで学ぶビジネス英語表現

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。

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