人々が世界中を自由に行き来する今、海外移住に憧れを抱く人も増えています。しかし、たとえば英語圏の国で暮らすには、少なくとも日常会話程度の英語力が求められます。英語力ゼロからスタートすることも不可能ではありませんが、その場合、どうしても現地で苦労をすることになり、海外移住を挫折するような事態にもなりかねません。将来海外に暮らすことを考えてはいるものの、現在の英語力がネックとなり、立ち止まっている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、英語学習における日本人の弱みに焦点を当てるとともに、使える英語を身につけるための勉強法をご紹介します。
なぜ日本人の英語は「使えない」のか
一口に「英語が苦手」と言っても、人によってそのレベルは異なります。しかし、日本人の多くが弱みだと認める分野は、スピーキングとリスニングではないでしょうか。この2つが弱みとなると、コミュニケーションのツールとして、英語4技能のうちの半分を「使えない」ということになります。一方、「中学・高校でしっかり文法を勉強し、英語の基礎はできている」という人は決して少なくありません。日本人の多くは、英語を「知識」としては身につけているものの、スピーキングやリスニングの際にはその知識を充分に活かすことができていない状態だと考えられます。
では、どうして日本人は英語を「使えない」のでしょうか? 要因は2つ考えられます。
一つは、誤りを気にして頭の中で考えすぎる傾向があることです。タイやインドネシアなどの東南アジア諸国には、日本よりも英語を話す人が多くいます。しかし、彼らの話す英語をよく聞いてみると、テンス(時制)などの文法面ではしばしば誤りがあります。また、発音も決して完璧とは言えません。それでも、細かい誤りを気にすることなくどんどんアウトプットをする彼らの姿勢は、多くの日本人にとって学ぶべきものです。
また、積極的に話す姿勢に加え、彼らの多くは「英語らしく聞こえる」ように話しています。そのため、英語が苦手な印象をほとんど受けません。ここに、日本人が英語を使えない理由の2つ目があります。日本人の多くは、「英語らしい話し方」を学んでいません。しかし、この話し方を理解していないと、たとえ正しい文法で話していても、相手には伝わりづらくなってしまいます。また、相手の発言内容を聞き取ることも難しくなります。その結果、多くの人が「知識はあるものの使えない」という状態になっています。
ではどうすれば、既に持っている知識を活かしながら、実際に使えるレベルまで英語力を高めることができるのでしょうか。
「使えない英語」を「使える英語」に変えていく勉強法
勉強法1:チャンクの区切りを意識する
まず、リスニングとスピーキングの際には、「チャンク(chunk)」の区切りを意識しましょう。チャンク(chunk)は「大きな塊(かたまり)」という意味で、ここでは「意味のあるひと塊」と考えてください。たとえば、for a while(しばらくの間)、when I was a student(私が学生だった頃)などが1つのチャンクとなります。
チャンクは、スピーキング時に一息で発するようにしましょう。一語一句をはっきり丁寧に話しても意味は通じますが、聞き手にとっては苦痛な上、英語らしく聞こえません。たとえば、外国人が日本語を話すとき、「わたし/のなまえ/は○○です」と助詞の前にポーズを入れると、意味は通じますがあまり上手には聞こえませんよね。同様に、英語でもチャンクの途中で区切ってしまうと非常に不自然に聞こえてしまいます。多くの日本人はチャンクを意識することなく英語を話していますが、チャンクの区切りを意識した話し方をするだけでも、英語の響きは大きく改善されます。英語の響きが改善されると聞き手にも伝わりやすく、自信も生まれるため、積極的に英語を話す姿勢にもつながります。
チャンクの区切りに慣れるには、ネイティブがどのように話しているかに注目し、それを真似してみることが効果的です。このとき、聞く(インプットする)だけでなく、実際に声に出して言う(アウトプットする)ようにしましょう。チャンクを意識することで、後述する「phrasal verb(句動詞)」も認識しやすくなります。勉強という形で取り組むのが苦手な人は、好きな歌や映画、ドラマなど興味のあることから始めると続けやすいのでおすすめです。
勉強法2:リンキングを意識する
次にご紹介するのは「リンキング(linking)」です。リンキング(linking)とは、スピーキング時に、単語と単語がつながった音に変化することです。リンキングの具体例をみてみましょう。
リンキングの例
I like it.
そのまま発音すれば「アイ・ライク・イット」ですが、ネイティブが発すると、likeとitがリンクして「アイライキッ(ト)」のように聞こえます。(ちなみに最後の「ト」はほとんど聞こえません。)このようなリンキングを理解していないと、「アイライキッ(ト)って何?」となってしまい、知っている表現や単語でも聞き取れないことがあります。リンキングに代表される英語の音声変化は、日本人の多くがリスニングを苦手とする要因です。
ネイティブは、一語一句をはっきりと区切らずに、前後にある単語の音をつなげて発音をしています。逆に言うと、一語一句の発音が完璧ではなくても、リンキングを意識した話し方をすることで「英語らしい」発音ができるようになります。リンキングの発音が身につくと、相手の言葉も聞き取りやすくなります。
リンキングの学習方法として最適なのは、「シャドーイング(shadowing)」です。シャドーイングとは、聞こえてくる英文の音を、影のように追いかけてリピートする方法です。隣り合う単語がリンクして発音されるのを聞き、それを真似て発音するため、リスニングとスピーキングの両方に有効です。また、チャンクやイントネーション、リズムなども身につくので、スムーズかつスピーディーに「使える英語」に改善することができます。
勉強法3:phrasal verb(句動詞)を覚える
これまでにご紹介した「チャンク」「リンキング」の2つを意識することに加え、ネイティブが日常的に使う「phrasal verb(句動詞)」を覚えましょう。phrasal verb(句動詞)とは、「動詞+前置詞」で構成された意味を持つ定型フレーズのことで、学校の英語教育では「熟語」とも呼ばれます。たとえば、get up(起きる)や look after(面倒を見る)などが句動詞にあたります。句動詞を使うことによって、幅広い日常の出来事を表すことができます。
get や look 自体は基本的な動詞ですが、前置詞が後ろに付くことで様々な意味になります。そのため、熟語としての意味も併せて覚えておかないと、ネイティブとの自然な会話が成り立ちません。getを使った句動詞の例をいくつかみてみましょう。
getを使った句動詞
- get along (with):仲良くする、うまが合う
- get away:逃げる、離れる
- get back to:再開する、返事をする
- get down:(高いところから)降りる、かがむ、ひざまずく
- get on:(乗り物に)乗る
- get off:(乗り物から)降りる、出発する
- get out:出る、出て行く、脱出する
句動詞を身につけるためのポイントは、日常生活に密着した表現から覚えていくことです。紙に書き出してみるのも1つの方法ですが、phrasal verbを学習できるスマートフォンアプリを活用するのもおすすめです。イラストと共に意味を紹介してくれるタイプの教材もあるので、自分に合ったアプリを見つけてスキマ時間に句動詞を習得しましょう。
まとめ
ネイティブの日常会話に使われる文法や単語の1つ1つは、日本の中学・高校で学習済みのものがほとんどです。英語の基礎ができていれば、今回ご紹介した学習方法を取り入れることで、リスニングやスピーキングのスキルを大幅に伸ばすことができます。世界の好きな場所で、自分がやりたいことを自由に楽しめるように、知識の段階にとどまっている英語を「使える英語」へと変えていきましょう!
reisuke
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