「英文法がとにかく苦手」「難しい」という声は、多くの英語学習者から聞かれます。特に、TOEICや英検などの資格試験に向けて勉強をしている人の中には、「参考書の解説を読んでも、説明がよくわからない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで今回English Hub編集部は、高校在学中に英検1級、TOEIC965点、さらにTOEFL iBT106点を取得し、早稲田大学国際教養学部にも現役合格されている、英語学習ライター・ちかさんに、英文法を習得した方法や、おすすめの勉強方法などについてお話を伺いました。
中学2年で不登校になり単身ニュージーランドへ1年留学したものの、留学当初は周囲との意思疎通が全く取れなかったというちかさん。英語上達の鍵になったのは、自宅で必死に取り組んだ「英文法の学習」だったそうです。
今、英文法の学習方法に迷っているという方は、ぜひちかさんのアドバイスを参考にしてみてください。
インタビュー目次
留学先のニュージーランドで、中1の英語教材を使って自習
Q:ちかさんの英語学習歴について教えてください
中学2年生の時に不登校になったのをきっかけに、日本の中学から籍を抜いて、ニュージーランドの学校へ転校するような形で1年単身留学しました。帰国後は日本の高校に入りましたが、高校2年時に1年間の交換留学が必須だったので、その時はオーストラリアに留学しました。
Q:留学当初の英語力はどのくらい?
ニュージーランドに行った時には、英語が本当にさっぱり分かりませんでした。もともと勉強自体が苦手だった上に中学2年からは不登校だったので、中1レベルの英語もあやふやな状態でした。
それなのに、語学学校ではなく現地校にいきなり飛び込んだので、現地の学生と同じように、理科や社会といった授業も全て英語でこなす必要がありました。授業内容は全く理解できないし、ホストファミリーが話す英語もほとんど理解出来なかったです。
Q:英文法の知識は、留学期間中に自然と身についた?
ニュージーランドで、あまりにも周囲との意思疎通に困ったことで危機感を感じ、毎日部屋で自習をするようになりました。とにかく基礎知識が不足していることを痛感していたので、日本から持参した中学1年生の英語教材を使って勉強するところからスタートしました。
ぼろぼろになるまで見返した、自作の英文法ノート
Q:自習はどのような方法で?
まずは、理解することに集中して教材を読み込んで、次に内容を人に説明するつもりでノートにまとめるということを行っていました。ノートにまとめる際には、なるべく教材は見ずに、自信のないところだけを確認するようにしていました。
ノートまとめは、教材を模写するだけの作業になってしまいがちかと思いますが、学んだ内容をアウトプットする要領で行うと、知識を定着させるのに貢献してくれると感じています。
ただ、どんなに丹精を込めてノートにまとめてもどんどん忘れていってしまっては意味がないので、ノートがぼろぼろになるまで毎日見返して復習していました。教材の例文と日本語訳をノートに写しておき、日本語文を素早く英文に変えるという練習も繰り返し行っていましたね。
後は、留学生クラスの宿題で「日記を英語で書く」というものがあったのですが、教材で覚えた文法をそこで実際に使ってみるということをしていたら、より文法力が伸びた実感がありました。英語を話す機会はなかなか持てないという方でも、この方法なら取り組みやすいでしょう。
Q:実際に使用された、おすすめの英文法教材があれば教えてください
今は廃刊になってしまっていますが、中1〜中3の学年ごとに分かれている学研の教材を、学年順に使って勉強していました。基礎レベルからやり直したいと考えている人は、このような学年ごとに分かれているシリーズがおすすめです。中1のものから順に取り組んでいくと、少しずつ確実に進めるので内容が身につきやすく、挫折もしにくいと思います。
現地校の留学生クラスでは、『Grammar in Use』という洋書の英文法教材を使っていました。『Grammar in Use』では、ネイティブが英語を覚えるのに近い感覚で英文法を学ぶことができます。ただ、この本は全部英語で書かれているので、英語初心者の方はやはり、「日本の市販教材を使って、中学レベルの英文法を理解する」というステップを先に踏んだほうがよいかもしれません。
Q:英検やTOEICを受けるにあたって、英文法対策は行った?
実際に英検やTOEICの問題を解いていると、自分の理解が浅い英文法が特定できてくるので、『Forest』などの文法教材を使って苦手な項目だけをピンポイントで読み込み、理解を深めるようにしていました。
基礎レベルの英文法のインプットがある程度完了している方であれば、試験問題を解きながら都度必要な知識を補充していくようにすると、学習の効率が良いと思います。
TOEICの文法スコアは、試験問題を繰り返し解くことで比較的伸ばしやすい部分なので、『公式問題集』を何冊か解いて、パート5を集中的に対策するのがおすすめです。
TOEICで問われる文法項目の数はそれほど多くはないので、基本的な文法をきちんと抑えた上で問題のパターンを習得すれば、スコアアップが見えてくると思います。
挫折を防ぐ「ミルフィーユ学習」
Q:英文法を苦手と感じる人も多い。勉強のコツは?
文法でつまずいて挫折してしまう人は「完璧に理解しなければ」と思っている方が少なくないように思います。文法の力は繰り返しの中で徐々についてくるものなので、一度で全てを完璧にしようとすると、どうしてもつまずきやすくなります。最初は「こんなものか」程度の理解でよいので、学習を続けることに重きを置くことの方が大切です。
また、高校英文法の教材には、日常会話での使用頻度が少ない文法も載っていますが、特に英語初心者の方は、英語のインプット経験がまだ少ないことから「どの項目が、習得の必要性が高い項目なのか」を判断できないことがあり、細かい英文法にまで拘って学習がストップしてしまうケースも多いように感じます。
上級者がより力をつけるために、「知識の抜け穴を埋めていく」という目的で行うのであれば、全文法事項を網羅するのも有効ですが、初心者の方が細かい英文法でつまずいて挫折しまうのは勿体ないです。
初心者の方は、まずは各文法のコアな部分を確実に理解して、基礎力を上げることを優先すべきです。各事項における「例外」のケースや、「こんな用法もあるよ」といったものは、後から少しずつ理解していけば大丈夫です。教材を何周も繰り返し読むなど、ミルフィーユの層のように徐々に知識を重ねていくつもりで取り組むとよいかと思います。
後はやはり、実際に書いたり話したりして学んだ英文法を使うということも、知識をより定着させるために大切です。
Q:参考書を読んでも理解できない場合には、どうしていた?
例えば「完了形」は、教材の表面的な解説だけを読んでもよく理解できなかったのですが、色んな英文法を解説しているサイトに目を通して、完了形の概念から理解していくことで克服しました。「1つの参考書を読んでも理解できない」という時には、別の参考書にあたってみたり、ネットを検索してみたりして、複数の視点からの解説を読むのがおすすめです。
それでも分からない時は、私は必ず「何を、どう理解できなかったのか」をメモしておき、いったん後回しにするようにしていました。文法用語や英文法の全体像に対する理解度が上がってからメモを見返して、分からなかった項目を再度学習してみると、解説がスッと頭に入ってくるようになっていた、ということがよくありました。
Q:英語を話す上でも、文法知識は役立つ?
「英語を話すのに文法は気にしなくていい」と言う人もいますが、会話ができるようになりたい人こそ、まずは基礎文法をしっかり習得することが重要になると思っています。というのも、基礎英文法を理解できていない状態の人が突然英語をアウトプットしようとしても、そもそものインプットが不足しているので、頭の中で英文を組み立てることが困難だからです。
でも、中学レベルの英文法をきちんとインプットして使えるようにすれば、単語など他の要素も必要ではありますが、基本的な英会話はだいぶクリアできるようになるはずです。
英語の基礎が弱い人は、やみくもに英語を話そうとし続けるよりも、きちんと時間と労力を割いて、まずは基礎文法の学習に向き合う期間を設けたほうが英語力は速く伸びると思います。私自身も、中学英文法を勉強し直してから、聞き取れる英語の割合が急速に増えたのを実感しました。
Q:英語学習者である読者に向けて、メッセージをお願いします
文法の力は、一朝一夕にではなく、段階的に身についてくるものです。最初から完璧を追求せずに、繰り返しのなかで習得していくことを目指して学習に取り組んでみてくださいね!
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