【インタビュー】海外で働くために必要な英語力とは?欧州在住リサーチャー・Yukariさんに聞く

「どんな仕事をしたいか」を考える際、日本国内だけに留まらず世界にも目を向けると、選択の幅が大きく広がります。海外就職に興味がある方は、実際に海外で働いている人がどのような経験をしてきたのかが気になるのではないでしょうか。

そこで今回は、現在オーストリア・ウィーン在住で、これまでに5ヵ国での就労経験があるYukariさんにインタビューを実施。海外で働く中で味わった楽しさ・厳しさや、英語学習にまつわるエピソードについてお話を伺いました。

話者プロフィール:Yukariさん

オーストリア、ウィーン在住。日本の大学ではフランス語を専攻、卒業後は英国の大学院で国際政治を学ぶ。これまでロンドン、ニューヨーク、トロント、モントリオール、パリ、シンガポールに在住。各英語圏における英語の違いに興味を持つ一方、イギリス英語に魅せられる。現在はリサーチャーとして主に欧州における英語・フランス語圏の政策調査に携わる傍、執筆活動も行う。

インタビュー目次

欧州在住リサーチャー・Yukariさんに聞く、「海外で働く」ということ

Q:Yukariさんの現在の仕事内容を教えてください

主な仕事は、EUや欧州の国々の政策・市場調査と、記事の執筆です。調査では、既存の資料・データ・文献から情報を収集するデスクリサーチに加え、企業や公共機関などに取材も行います。

また、日本のクライアントが現地調査として欧州に来られる際には、同行通訳をすることもあります。フリーランスで仕事をしているので、依頼があれば、調査から関係先とのアポ調整・通訳・翻訳まで対応する「なんでも屋」です。

Q:仕事をする中で、英語を使う機会はどれくらいありますか?

調査案件の場合、基本的に資料はすべて英語で、時にはフランス語が必要になるケースもあります。

取材の際も、英語を話すことが多いですね。欧州の国際的なビジネスシーンにおける共通語は英語ですので、どの国に行ってもほとんど英語でコミュニケーションを取っています。

Q:海外での生活や仕事において、言語で困った経験はありますか?

いつも困っています(笑)。私にとって英語はあくまでも第二言語であり、母国語同様のレベルには達していません。欧州で仕事をしており、流暢に英語を話す人たちが周りにたくさんいるので、いつも自分の英語に関してコンプレックスを感じます。何十年も英語を学習し、留学も経験し、自分なりに一生懸命やってきましたが、「それでもこの程度か」と落ち込むことも多々あります。

言語の習得に終わりはないので、「ここまでやったから完璧」「満足」ということはありません。どれだけ学習をしても、ネイティブと同じように英語を使いこなすのは難しいものだと感じています。

一方で、欧州の国々では、英語圏への留学・居住経験がなくても、独学で高い英語力を身につけている人たちが少なくありません。彼らの場合、母語と英語が似ていて言語的な距離が近いというケースもあるので、そのような点は私たち日本人にはないアドバンテージだと思います。

アパートでの水漏れトラブルへの対応

日常生活で困ったのは、机上ではなかなか学ぶことのない英語表現が必要になった時です。たとえば、アパートの部屋で水漏れが起きてしまい、業者に連絡して状況を説明しなければならない場合。水道設備の部品の名称などは日本語でもすぐに思い浮かびませんが、それを英語で伝えるとなるとますます分かりません。辞書で単語を探すにも、自分のシチュエーションにぴったり合うような状況がすべて書いてあるわけではないですよね。

メールでのビジネス英語表現に苦戦

仕事では、メールでやり取りをする際のビジネス英語に最初苦戦しました。日常会話ではあまり登場しない、メール特有の英語フレーズがあったり、フォーマルな内容でも場合によってはある程度くだけた表現が使われていたりもします。英文メールの書き方に慣れるまでは、ネイティブから届いたメールに書かれている表現を参考にしながら懸命に勉強しました。

Q:「海外で働いていてよかった」と感じることはありますか?

一番の喜びは、日本にいるだけではおそらく出会うことのなかった方々と知り合い、一緒に仕事ができることでしょうか。色々な国の人たちと交流し、自分自身の世界が大きく広がっていくことにも楽しさを感じます。

他に、欧州で働いていてよかったと思うのは、単純ではありますが、休暇の多さや、休暇取得に対する周囲の理解があることですね。ストレスの溜まる仕事をしている時は、特に休暇が必要です。私自身はフリーランスなので、休暇の日数を自分で調整し、1ヶ月以上の長期のお休みを取ることもあります。

欧州の人々の中では、長期休暇の存在が一般的なので、休暇中である旨をきちんと伝えておけば、無理に仕事を急かされることもありません。私の夫は会社勤務ですが、夏には3週間の休暇を取ります。こちらでは、オフィスワークをしている人が2~3週間程度の休暇を取る場合、代役を立てることはまずないので、休暇中はその仕事自体も一時的にストップします。そして、そのような状況でも文句を言う人はいません(笑)。

休暇に対する理解があり、同僚や上司にも遠慮なく休みが取れる点は素晴らしいと思います。「良い仕事をするには、充電期間(長期休暇)が必要」という考え方が好きですね。

Q:逆に、「海外で働く大変さ」にはどのようなものがありますか?

それぞれの国のビジネス文化に慣れるまでの時間は、大変でした。たとえば、ニューヨークからパリへ移った時は、アメリカとフランスのビジネス文化の違いに大きなショックを受けました。私はこれまでに5ヵ国での就労経験がありますが、慣れるまでに最も時間がかかったのはフランスです。

「謝る」という行為に対する理解の違いからか、私の周りでは、仕事上のミスに関して自らの非を認めて謝る人がほとんどいませんでした。フランスでは、「謝る=相手に弱みを見せる」と捉えられる傾向があります。そのため、こちらが相手のミスや間違いを正そうとすると反感を買い、相手も自分を正当化することだけにエネルギーを費やしてしまいます。これでは時間の無駄なので、私は「今一番大事なのは何か」に焦点を当てるようにしました。最も重要なのは、ミスによって滞っている仕事を完了させること。このポイントを踏まえ、とにかくその業務を遂行するようにこちらが「お願い」すると、相手はやる気になってくれます。

フランスに移り住んだ当初は、考え方や文化のあまりの違いに、その状況を楽しむ余裕もありませんでした。自分なりの対処方法を見つけるまでにかなりの時間がかかり、常に相手に対して怒っていましたね。しかし、対処法が分かってからは仕事もスムーズに進み、ようやくその違いを楽しめるようになりました。

パリ

「海外で働きたい」と考える人へのアドバイス

Q:海外で働くには、どれくらいの英語力が必要だと感じますか?語学力以外でも必要だと感じたものがあれば教えてください

ビジネスの現場では、「英語が話せて当たり前」

自信を持って業務を遂行するためには、上級レベルまで英語力を高めることが必須だと思います。仕事の種類にもよりますが、海外で働く際は、電話応対から、会議やプレゼン、報告書の作成まで、幅広い業務をすべて英語でこなす必要があります。たとえば、アメリカのニューヨークで働いていた時は、そもそも「英語が話せて当たり前」というところがスタート地点でした。ビジネスの場は厳しいので、英語力が不十分なことを「外国人だから」と大目に見てくれるような配慮はほぼないと感じます。

ニューヨーク

文化の違いを楽しむ柔軟性

英語力以外で必要なのは、柔軟性ではないでしょうか。異文化の中でさまざまな国籍の人たちと仕事をしていると、言語や考え方の違いが山ほど出てきます。「なぜこんなことが起きるの?」と、疑問が湧いてくることばかりです。この状況を単なるストレスと考えるか、あるいは面白いと捉えて楽しむかによって、海外での生活に大きな違いが出てきます。「違うからこそ面白い」と受け入れれば、そこから学べることがたくさんあります。柔軟な考え方を持っていれば、海外生活を楽しみながら、その国ならではのユニークな経験を得られるはずです。

Q:Yukariさんご自身が効果的だったと感じる英語学習法があれば教えてください

英文をひたすら読む

英語学習の過程で、「これ以上、もう上達できないのでは」と壁にぶつかった時期が何度かありました。そんな時に効果的だったのが、英文をひたすら読むことです。この学習法に取り組んだきっかけは、「読むことは、(語彙力やライティング力の向上など)全ての道に通じる」という、英国人の英語の先生からのアドバイスでした。

具体的な方法としては、自分がやや難しいと感じるレベルの英文を読み込みます。内容が理解できるまで何度も読み、どうしても分からない時には日を改めてまたチャレンジする。これを繰り返していくうちに、読んでいる英文とその意味が頭の中でスムーズに一致するようになります。難しいと感じていた内容が理解できた時は、英語力の上達を感じ、その後の学習へのモチベーションにもつながりましたね。

英語で独り言をつぶやく

会話の上達については、とにかく話す時間を多く持つことだと思います。実際に英語を話し、間違うことが、上達につながります。話す機会、間違う機会をできるだけ作ることが大切です。

私自身は、英語で独り言もつぶやくようにしていました。日常生活において、「この日本語は英語でなんと言うのだろう」「この気持ちはどんな風に英語で表せるだろう」など、常に疑問を自分自身に投げかけ、分からない単語があれば調べて、英語で表現してみます。独り言は、周りに人がいるときには少し難しいので、入浴中など一人の時間をよく利用していました。このように、普段から思ったことを英語で言葉にする練習をしておくと、自分の考えを伝える時にも役に立つはずです。

Q:海外で仕事に就くことは、国内就職とは異なる難しさがありますか?

どのような形で仕事に就くかにもよりますが、正直なところ、海外だからこその難しさはあると思います。人種差別の問題を含め、外国人であることが何らかのハンディキャップになる状況は、どこの国でも存在するのではないでしょうか。

特に雇用に関しては、自国民を優先して採用を行うのが一般的です。通常、外国人がその国で就労するにはビザが必要なので、企業側も時間と手間をかけて取得の手続きをしなければなりません。したがって、雇用される側は、就労ビザの取得にかかる手間なども踏まえた上で、企業にそれ以上のメリットをもたらす存在であることを示す必要があります。

一方、日系企業の海外支社の採用などでは、日本語が話せるといった日本人ならではの強みが武器となるケースもあります。ただし、そのような職種のポストは決して多くないですし、支社が置かれている大都市のエリアのみに機会が集中しがちです。

海外で働きたい場合、まずは日本で、海外支社のある企業や外資系企業に就職し、そこから駐在を目指すという手もあります。このパターンであれば、海外勤務に伴う手続きや引越しなども含めて、会社が全面的に支援してくれる場合が多いでしょう。将来海外で働くための一つの選択肢として、まずは日本国内でチャンスを探ってみる方法は有効ではないでしょうか。

Q:「海外で働きたい」と考える方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします

語学に関しては、早めに勉強に取り組み、出発前から準備しておくのがおすすめです。特に、日常生活におけるさまざまなシチュエーションを想定して、それぞれの場面ごとに使えそうな語彙やフレーズを学習すると役立つと思います。その他にも、住居を探す際の不動産広告の読み方、契約書の書き方、銀行での口座の開き方、インターネット会社や携帯電話の選び方など、現地での暮らしに直結する情報をあらかじめ仕入れておくと便利です。

海外に出る選択をされるあなたは、英語学習への強い意欲や、未知の海外生活への憧れを持たれていることと思います。その想いが、不安や心配を上回るからこそ、海外へ出られる決心をされるのだと思います。その「情熱」は、現地で壁にぶつかったときに大きなエネルギーとなり、必ずあなたを牽引し続けてくれるはずです。

編集後記

「日本と海外」の違いだけでなく、「アメリカとフランス」といった異なる国同士のビジネス文化のギャップを乗り越えたエピソードは、さまざまな国で仕事をしてきたYukariさんならでは。異国の地で暮らしながら働くことは決して容易ではありませんが、日常の中で出会う「違い」を常に楽しもうとする心意気が印象的です。

海外で働く場合、高い語学力を持っていることは一つの重要な条件となります。「言語の習得に終わりはない」というYukariさんの言葉の通り、英語学習は長い道のりではあるものの、その過程も楽しみながら学び続けることが何より大切なのではないでしょうか。

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