世界各地のcomedy barやcomedy clubで楽しまれているStand Up Comedy(スタンダップコメディー)は、舞台に立つコメディアンがマイク1本で客席を沸かせるスタイルのパフォーマンス。近年、日本でもにわかに人気上昇中です。NetflixやYouTubeでスタンダップ・コメディアンたちの多彩なトークに魅了された人も多いのではないでしょうか。
本場である欧米諸国のカルチャーを味わいつつ、リスニング力や語彙力も鍛えられるコメディー鑑賞は、生きた英語を楽しく学ぶ手段としても有効です。
今回は、イギリスでスタンダップに出会い、現在東京でスタンダップ・コメディアンとして活躍するMeshidaさんに、English Hub編集部がインタビュー。スタンダップコメディーの魅力と、その楽しみ方を語っていただきました!
早稲田大学卒業後、IT関連会社に入社。サラリーマンの傍、英語でスタンダップコメディーを始める。5年勤務した後、脱サラし渡英。スタンダップ・コメディアンとして活動を開始。帰国後、訪日外国人観光客に向けた英語のスタンダップコメディーショー「My Japanese Perspective」を東京の浅草で主催。同時に「Funny Japan Project」を立ち上げ、日本の文化、歴史、国民性などをFunnyに発信するイベントなどを企画。
インタビュー目次
「Standup Comedy」って何
Stand Up Comedyの魅力について教えてください
Meshida:スタンダップコメディーとは、コメディアンが1人で舞台に立ち、マイク1本で話をするコメディーのスタイルです。綾小路きみまろさんをイメージするとわかりやすいかもしれません。
日本語に訳すと「漫談」なのですが、「漫談」と表現してしまうと少しマイルドすぎる気がします。漫談がミルクとお砂糖の入ったちょっと甘いカフェオレだとすると、スタンダップコメディーはコクと苦みの効いたブラックコーヒー。スタンダップでコメディアンが扱うトピックは幅広く、政治、時事、性、宗教、ジェンダーなど多岐にわたります。タブーとされる話題にもグイグイ切り込んでいきます。
日本ではあまり知られていませんが、英語圏はもちろん、非英語圏の国でも基本的に海外のコメディーのベースはスタンダップコメディーです。それなりにエンターテインメントが普及している国には大抵、comedy barやcomedy clubというジャンルのbar(club)が存在し、コメディーはお酒を片手に楽しむ大人の娯楽となっています。
Standup Comedyで取り上げられるのはどんなトピックが多い?
Meshida:スタンダップコメディアンは、まず自分のことをトコトンネタにします。出身、人種、年齢、育ち、家庭環境、宗教、容姿、性癖などまず自分が何者であるかを面白く自虐します。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどスタンダップコメディーが流行っている国では、日本に比べて幅広い民族、人種、宗教の人たちが暮らしているので、まずは自分が何者であるかを語り、その上で、そんな自分から見た世界をいじり倒します。
人種の違いを笑いに変えるのは定番で、例えば、黒人のコメディアンは、白人社会をいじって笑いをとります。中国人やインド人は大人気で、いろんな国のコメディアンがネタにしています(笑)。
万国共通で下ネタは大人気ですが、欧米ではコメディーが大人の娯楽ということもあり、ベッドの上にこそ社会があるといわんばかりに、SEXについて語りまくります。日本では到底人前で話せないことも赤裸々に語ります。男性のコメディアンだけではなく、女性のコメディアンもベッドの上での男性をネタにして笑いを取っています。
またコメディーが権力に対して楯つく武器の一つとして機能しているので、政治をいじるのは当たり前で、アメリカのトランプ大統領やイギリスのメイ首相はコメディアンたちの格好のネタとなっています(笑)。
日本の漫才や落語との違いは何ですか?
Meshida:僕は日本の漫才が大好きなのですが、スタンダップコメディーを見るときと比べて安心感があります。なぜならツッコミがいるからです。ボケが何かやばいことを言っても、常にツッコミがそれに対してツッこんでくれるので、安心してみることができます。
スタンダップコメディーはお客さんがツッコミとなって笑いでツッコみを入れる感じです。例えば、爆笑問題の漫才を田中さんなしで、太田さんが一人でひたすらしゃべり続ける様子を想像してみてください。
お客さんの笑い方も多種多様で、おもしろいオチに対する大笑い、コメディアンがグレーな話題に切り込んだ時の悲鳴笑い、ブラックなジョークに対する、笑っちゃいけないけど笑ってしまう我慢笑いなどなどいろいろな笑い方があります。
また、落語は英語でいうとストーリテリングというジャンルのコメディーに近いと思います。スタンダップコメディーは自分の意見を言って笑いを取るのに対し、落語は自分ではない第三者の物語を語るので、そこが一つの大きな違いです。ただ落語の枕は、スタンダップコメディーにかなり近いと思います。
よくスタンダップコメディーの話をすると、日本で流行っている「すべらない話」との違いは何か、と問われることがあります。僕が思うに、すべらない話は、おもしろいことがおこることが前提にあり、おもしろいことがおこって、それがオチとなります。スタンダップコメディーの場合は、おもしろいことがおこった後、それに対する自分の考えや意見を表明して笑いをとります。イギリスでコメディーのワークショップに参加したときに、コメディアンの先生からよく「after thought」をもっとネタに入れるように言われました。「after thought」とはその名の通り、物事がおこった後(after)の、それに対する自分の考え(thought)です。おもしろい出来事の結果(オチ)で笑いを取るのではなく、それに対する自分の考えで、笑いを取るのがスタンダップコメディーと言えるかもしれません。
スタンダップコメディーの世界で、日本でいう「オチ」の部分は、「punch line」と表現されます。自分の「考え」で、観客の笑いのツボを「パンチ」して笑わせるのです。
Standup Comedyの楽しみ方
英語力初級者がStandup Comedyを楽しむために、知っておいたほうが良い前知識はありますか
Meshida:スタンダップコメディーはいろいろな国、人種、民族、宗教をいじって笑いをとることが多いので、ステレオタイプを知っておけばより楽しめます。例えば日本で例えるならば、大阪のおばちゃんはヒョウ柄を着ているとか。スタンダップコメディーでは、そういった世界のステレオタイプを前提にジョークを言うことが多いです。有名なステレオタイプでいうと、「黒人はチキンが好き」「イギリスの料理はまずい」「インド人はエンジニアが多い」など。
ニュースなどを前提にすることも多いので、今どんなことが世界で起こっているのか海外のnewsをチェックしておくのも大切かと思います。
英語がわかってもユーモアを理解するのは難しいことがあります。理解を深めるために何かできることは?
Meshida:なぜ面白いのか?わからない時は徹底的に調べることです。自分もよくGoogle先生にジョークの意味を尋ねています(笑)。
もしネイティブの友人がいるなら、恥ずかしがらずに聞いてみましょう。最近はNetflixでも多くのスタンダップコメディー・ショーを日本語の字幕付きで視聴できます。字幕付きで観て内容をある程度理解してから、英語で再度見て、細かなところを確認するのもジョークの理解を深める上で、とても役に立ちます。
知っておいた方がよいコメディーに関するキーワードを教えてください
- punch line(オチ)
- controversial joke (議論になるジョーク)
- dark joke(ダークなジョーク/ブラックユーモア)
- dirty joke(下ネタ)
- racist(人種差別主義者)
- sarcasm(日本語に訳すと「皮肉」です。日本ではお酒の席で陰口を言うようなときに皮肉が使われることが多い気がしますが、海外ではコメディーのネタで人を笑わせるのによく皮肉を使います。)
Standup Comedyを演じる楽しさとは?
Meshida:英語で話す時、日本語を話す時の自分とは違う自分になれるのがとても楽しいです。また、スタンダップコメディーでは自分の考えを自由に発言することができ、圧倒的な表現の自由が楽しめます。
Standup Comedyを始めたきっかけは?
Meshida:幼い頃から日本のお笑いが大好きで、将来は放送作家になりたいなと思い学生時代を過ごしていました。大学時代、ふと英語を話せるようになりたいと思い、イギリスに語学留学した際に、いろいろな国の友達ができ 、英語でコミュニケーションをとる楽しさを知り、英語で日本のお笑いをやりたいと思うようになりました。
滞在中、イギリス人の友人にお笑いが好きだと話すと、「Little Britain」というイギリスのコメディー番組(日本でいうコント的な番組)を勧められたのですが、日本のお笑いとは違い、障害者、ゲイ、人種差別などを容赦なくネタにするイギリスのブラックなユーモアが笑いのツボにはまってしまいました。
さらに「コメディーやるなら、スタンダップコメディーを観なきゃ!」と、その友人がロンドンのcomedy barに連れて行ってくれ、Yes, fall in love(笑)! マイク一本、自分の意見で大人の観客相手に笑いをとるスタンダップコメディーに感銘を受け、お笑いではなく、スタンダップコメディーをやろうと決めました!
イギリスのユーモアのスタイルを教えてください。
Meshida:イギリスのコメディーといえば、ブラックジョークと皮肉で有名です。イギリスのコメディアンたちがよく口にする「comedy is tragedy plus distance(time)」という言葉があります。チャップリンの「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」という言葉も有名です。
イギリスでは、悲劇を語り、それを皮肉って笑いに変えることで意味のあるジョークになると考えられているので、コメディアンたちは日本では到底ネタにできないようなこともネタにします。
スタンダップ・コメディアンになるには?
Meshida:スタンダップコメディーが盛んな国でコメディアンを目指すのに、日本のようにお笑い養成所に行く必要はありません。「オープンマイク」と呼ばれる誰でもコメディーができるイベントがいろいろなバーで行われており、そこにエントリーしてパフォーマンスすることからキャリアが始まります。イギリスでオープンマイクに参加した時は、子供を預けて参加しに来たという主婦、仕事帰りの銀行マンなどいろいろな人たちがオープンマイクに参加して腕を磨いていました。多種多様な人がコメディーに挑戦できる場となっています。
日本でStand Up Comedyを観たくなったら?
初心者に観て欲しいおすすめスタンダップ・コメディアンは?
- Michael McIntyre(イギリス)
- Ali Wong(アジア系アメリカ人)
- Jimmy Car(イギリス)
日常のことを楽しく話すコメディアン。日本人のユーモアに近いので初心者におすすめです。
妊婦中のコメディーショーで人気者になったコメディアンヌ。
イギリスのトップコメディアン。ワンライナーと言われる短いジョークを連発する。
ダークなユーモアで有名。
日本でStand Up Comedyをライブで楽しめる場所は?
Funny Japan Project
日本のFunnyをコメディーを通して楽しく発信するプロジェクト。英語や日本語のコメディーショー、ツアー、インターナショナルなイベントを企画。私が浅草で英語のコメディーショーを運営しています。
【URL】https://funnyjapanproject.com/
Stand Up Tokyo
下北沢、六本木、恵比寿、渋谷、大塚でショーを主催。海外の有名コメディアンが招かれることもあります
【URL】http://www.standuptokyo.com/
English Hub主催”Stand Up Comedy”ナイトin Tokyo!【終了】
※こちらのイベントは終了しました。ご来場いただいたみまさま、ありがとうございました!当日の様子はこちらのレポートからご覧ください。
5月17日にEnglish HubとFunny Japan Projectの協同で、スタンダップコメディーを東京にいながら楽しめるライブイベントを開催します。当日はまず、英語のコメディーが初めてという方のために、ショーを楽しむためのポイントを簡単に解説。続いてアメリカ、オーストラリア、イギリス、日本など国籍も多彩な8名のコメディアンが、1本のマイクを手にライブでALL ENGLISHのコメディーを披露。たくさん笑ったあとは、コメディアンたちと英語で交流できます!
【イベント詳細&申込み】https://englishhub-standup.peatix.com/
スタンダップコメディーの世界へようこそ!
今、訪日観光客相手にスタンダップコメディーを通して日本を面白く紹介しようと孤軍奮闘しているMeshidaさんも、かつてはロンドンのcomedy barで出会ったスタンダップコメディーに衝撃を受けた1観客だったそうです。言語と文化への理解によってより深く味わえるというスタンダップコメディーの世界。ご紹介したおすすめコメディアンたちの動画を視聴して思わず笑いでツッこみを入れたくなったら、あなたも立派なスタンダップ・コメディーファンです。次はライブで楽しめるショーを探して訪れてみませんか?
English Hub 編集部
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