「ドラマ仕立て イギリス英語のリスニング」著者インタビュー。ダイアローグで学ぶイギリス英語と英国カルチャー

イギリス英語は難しいと感じていませんか。英国ドラマで耳にする英語のスピード感や発音に、苦手意識を感じている人も多いようです。

研究社から発売された「ドラマ仕立て イギリス英語のリスニング」は、そんなイギリス英語の習得を目指す学習者なら、必ず手に取ってほしい一冊です。リスニング音声を通して多様な発音に触れ、テキストを通してロンドンの街角で飛び交うup to dateな表現や英国カルチャーを学ぶことができます。

今回は、著者のNadia McKechnie先生に、その制作の裏側や効果的な活用法についてうかがいました。

話者プロフィール:Nadia McKechnie(ナディア・マケックニー)

ロンドン出身、ライター・ナレーター・英語講師。NHK 基礎英語をはじめ、英検・TOEIC関連教材、英会話単語ドリルなど、20年以上にわたり幅広いコンテンツの制作やナレーションに携わる。「もっとイギリス英語でしゃべりたい! (共著、研究社)」など、人気の著書多数。
WEBサイト:http://www.nadiamckechnie.com/

※この記事は話者の了承のもと、英語で行われたインタビューの内容を日本語へ翻訳および編集したものです。

インタビュー目次

ロンドン暮らしのStellaの1年から学ぶ、多彩なイギリス英語

本書のタイトルは「イギリス英語のリスニング」ですが、リスニングだけでなく、会話文も学べるストーリーブックになっていますね。

イギリス英語のリスニングP2画像はい。本書はリスニング力を上げるだけでなく、実用的な表現をダイアローグからで学んでスピーキングにも活かせる教材です。

例えば、ダイアローグで使われている「重要表現」を紹介するコーナーでは、会話文を細分化し、”I’ve been meaning to…(ずっと…するつもりだった)”などの使いまわしやすい表現をリストアップしました。こうしたフレーズをほかのフレーズと組み合わせれば、伝えたいことを言い表す文を自分で組み立てられます。

ストーリーを楽しみながら学ぶコンセプトなので、副題を「楽しく学ぶ!ロンドン暮らし12か月のストーリー(英題 London Girl Stella’s One Year Dialogue Story)」としました。

ストーリーを追ううちに、先が気になって一気に読み進めたくなりました。知らなかった表現も、場面と一緒に自然に覚えられますね。

場面や状況と結びついて記憶に刻まれた言葉はいつまでも頭の中に残ります。ですから文脈の中でフレーズを覚えてもらえるように、ストーリーの中に様々な表現を組み込みました。

物語がおもしろければ、読み手の心情は話に沿って変化しますよね。感情の動きがあれば、そのときの記憶が脳に残ります。そう考えて、講師として教室でスピーキングを教えているときも、生徒にはできるだけ気持ちをこめて話すように伝えています。

TV番組の会話からピックアップしたリアルな頻出表現

着想から完成まで、どのぐらいの時間がかかりましたか?制作の流れも教えてください。

イギリス英語のリスニング P4画像本書に取り組み始めたのは、2年近く前です。取り入れたいコンテンツが本当にたくさんあり、志高く取り組んだ結果、完成までに想定以上の時間がかかってしまいました。

ストーリーに沿ったテキストなので、まずトピックとテーマを企画し、次に言語的なコンテンツを考えました。日本で講師として長く英語を教えてきた経験からも、イディオム、表現、単語、アメリカ英語との違いなど、取り上げたい要素はたくさんありました。その後、6か月ほどかけてドキュメンタリーやドラマなどのテレビ番組をとことん見て、話し方のパターン、多用されている表現などをリサーチしました。このとき、例えば“I was wondering if…”のように、あいまいさを残す表現が頻繁に使われていることに気づき、取り入れたりしました。

それから、様々なバックグラウンドを持つ人々が集うイギリスの多様性、多文化性、オープンマインドで寛容でフレンドリーなところなどもこの本で紹介したいと思い、取り入れました。

会話文には、なじみの薄い言い回しや表現も。「cheers」は「ありがとう」という意味でも使われるのですね。

ドアを開けてくれた人に「Cheers」と返したりするのは、UKでは日常的な光景です。カジュアルでフレンドリーな表現がイギリス英語にはたくさんあります。(同僚との会話で使われている)「throw a wobbly(突然怒り出す)」のような、生き生きとした楽しい表現が多いのも、イギリス英語の特徴です。

多様なイギリス英語の発音と魅力的な訛りに触れられるDL音声

訛りのある英語を話す人物も登場しますが、意識的に様々な発音の英語を取り込んだのでしょうか?

実際にロンドンで生活してみると、いろいろな発音や訛りを耳にします。そのロンドンの自然な姿を、ただ忠実に再現したいと思いました。

多様なイギリス英語の発音については、この本の冒頭で解説しています。日本で放映されている「シャーロック」、「ダウントン・アビー」などのドラマでは主に、RP(received pronunciation=容認標準発音)と呼ばれるフォーマルな発音が使われていますが、本書には、Cockney(コックニー)やEstuary(河口域英語)といった訛りや、ロンドン北部の訛りなど、ロンドンで使われている様々な発音が登場します。

それから、登場人物が話す相手によって少しずつ発音を変えているのに気付くかもしれません。例えばStellaは上司と会話するときと友達と会話するときとで、ほんの少し異なる発音で話したりしています。これもイギリスではよくあることです。

登場人物の声を演じているのは?

ナレーションの仕事を通じて親交のある優れたナレーターを集め、出演してもらうことができました。若者特有のトークができるナレーター、威厳のある声で年配者を演じられるナレーター、気取った話し方が得意なナレーターなど、それぞれが配役に合わせて演じてくれました。私自身がStellaを演じ、合わせて6人のナレーターが出演しています。

Nadia McKechnie先生インタビュー風景

レベル別・効果的な活用法

本書の効果的な活用法を教えてください。

本書は初級から上級まで、幅広いレベルの学習者に適した教材です。最初はぜひ、音声を聴くことで自分のリスニングレベルをチェックしてみてください。

もし100%聴き取れたら、今度は音声の後から同じセリフをリピートし、流れるように話すための練習をします。日本語訳はあまり見ないようにします。フレーズを記憶に定着させるには、感情をこめて会話文を読み上げるのも有効です。それからテキストの文例に目を通し、文法事項などを確認したら、今度は自分で文を作ってみます。筆記したことは記憶に残りやすいので、時間があれば、文章は紙に書き出しましょう。それぞれのイギリス英語に対応するアメリカ英語についても考えてみましょう。イギリス文化についてのコラムなども楽しんでください。

初級者の場合はまず、音声を聴いてわからなかったところをセンテンスごとに確認します。テキストで文法事項やnotes欄の解説を読み、日本語訳にも目を通します。すべてのフレーズを完璧に使いこなせるようにならなくてもいいので、学びたいポイントを絞って頭に入れましょう。ストーリーが理解できたら次のチャプターに進みます。こうやって最後のチャプターまで進んだら、もう一度最初のチャプターに戻ります。この時点で、英語力は必ず向上しているはずです。長い間1つのチャプターに留まって学び続けるのは退屈ですよね。少しずつでも知識を身に着けて次に進み、また戻ってきたらさらに学びたいポイントを選び、先ほどの流れを繰り返してください。

伝えたいこと

「ドラマ仕立て イギリス英語のリスニング」を通して学習者に一番伝えたかったことは?

主人公Stellaのエピソードは、読めば元気が出てくるようなストーリーにしたいと考えて書き起こしました。大好きなイギリスやロンドン・カルチャーの魅力も詰め込みました。本書を通してイギリスの文化の一端に触れ、イギリス英語の習得を楽しんでもらえればうれしいです!

インタビューを終えて 編集後記

インタビューを通して、Nadia先生の話す美しいイギリス英語にすっかり魅了されてしまいました。ロンドン・ガールStellaの1年間の物語は、音声にして1分程度の細かい場面に区分されています。そしてその短いシーン一つひとつに、イギリスを知り、英語表現を学ぶための、驚くほどたくさんの要素が凝縮されています。一度読み始めたら途中でやめられなくなるストーリー展開も、学習の継続を後押ししてくれるはずです。この一冊が、あなたのロンドンへの入り口になるかもしれません。

書籍概要

イギリス英語のリスニング表紙画像
タイトル [ドラマ仕立て]イギリス英語のリスニング
著者 ナディア・マケックニー
近藤康裕
価格 1700円(税別)
出版社 研究社
概要 イギリス英語を楽しく学べるリスニング書。ロンドンに住む主人公、Stellaの1年間のストーリーをたどりながら、ダウンロード音声やスクリプト・解説を通してリアルなイギリス英語を習得できます。イギリスの文化、マナー、ドラマなどを紹介する40以上のコラムも必読。

こちらもおすすめ!Nadia先生の人気の著書

タイトル もっとイギリス英語でしゃべりたい!
著者 小川直樹、ナディア・マケックニー
価格 2000円(税別)
出版社 研究社
概要 イギリス英語の韻律を理論と実例で徹底解説。会話文、長文をセンテンスやフレーズごとに繰り返して聴けるリピート音声(ダウンロード)で、UKイントネーションが効果的に身に着きます。イギリス英語を知り尽くした音声指導のプロ、小川直樹先生と英文・コラムを担当したナディア先生の共著です。※CD1枚付き

関連講座のご紹介

「ドラマ仕立て イギリス英語のリスニング」を使用したNadia先生の講座「イギリス英語をドラマ仕立てで楽しく学びましょう!」が、2018年2月から「学習院さくらアカデミー」で始まります。レッスンでは、よく使われる表現やイディオムを会話の中で自然に使う練習ができます。イギリス英語でたくさん話してスピーキング力を磨きたい学習者におすすめです!

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