ニューヨークタイムズによると、アメリカは2019年の難民受け入れ上限を前年を下回る30,000人に設定したことにより批判を受けています。難民問題では受け入れ国側の保守的な動きも見られますが、今回は難民受け入れ国側の課題として挙げられる3つのポイントを10個の関連語彙とともにご紹介します。
「難民問題」について英語で知っておきたいキーワード①~⑩
1. ①abuse of the refugee system 「難民制度の悪用」
前回の記事で日本の難民認定率の低さに触れましたが、その理由として就労等を目的にしながら難民申請を利用する虚偽の申請が多いこともあることがあげられています。難民制度を悪用することは”abuse the refugee system”と表現できます。法務省はホームページで、濫用・誤用的な難民認定申請の増加によって本当に必要な人への対応が遅れている事態を示しました。
“The abuse of the refugee system stems from the fundamental fact that Japan suffers from labor shortages and yet does not accept foreign workers.”(Eri Ishikawa, Japan Association for Refugees)
「難民制度が悪用される背景には、日本では労働者が不足し、それでも外国人労働者を受け入れないという根本的な事実がある。」 ―難民支援協会 石川えりさん
(Japan to curb asylum seekers’ right to work from Monday | Reutersより)
【例2】
例:“…it is important to call attention to those who abuse the asylum system by falsely claiming persecution simply to get into a country. This not only jeopardizes a whole system and delays asylum adjudications (not to mention the financial cost); it especially harms those who urgently need refugee protection.“(Nayla Rush, Center for Immigration Studies)
「迫害を偽装し、単に入国するために難民制度の悪用をする人たちに注意を促すことが重要。偽装申請は(経済的負担はいうまでもなく)制度全体を危険にさらすだけでなく、審査を遅らせ、特に強く難民としての保護を必要とする人々に被害をもたらす」 ―移民研究センター ナイラ・ラシュさん
(This World Refugee Day, Let’s Address Fraudulent Asylum Claims That Are Detrimental to Legitimate Asylum Seekers| Center for Immigration Studies より)
関連語:②loophole「抜け穴」
制度の悪用については「法律や既定の抜け穴を見つけ悪用する」という言い換えもできますが、このようなときに少しカジュアルに使える語彙でloophole (抜け穴)があります。
【例】
Loopholes in the refugee system created unintended consequences to the immigration process.
2. ③homogeneous country「単一民族国家」
次に、難民受け入れの難点として「単一民族国家」があります。例えば共通言語や文化もひとつであり、自ら進んで望まない限り様々な文化、人種や言語に触れる機会があまりない国に、宗教や生活様式も異なる難民が入国した場合、社会になじめるかどうかということが懸念されます。
The integration of refugees into a homogeneous society can be challenging for both the host country and the refugees.
(難民の単一民族社会への統合は受け入れ国と難民両方にとって困難な可能性がある。)
対義語:④heterogeneous country「多民族国家」
一方で、多種多様な言語や文化がある国のことをheterogeneous countryで説明します。パプアニューギニアでは850以上の言語が生まれ、現在でも830ほどの言語が日常的に使われているそうです。
【例】
Papua New Guinea is the world’s most heterogeneous country.
(パプアニューギニアは世界最大の多民族国家である。)
3. ⑤infrastructure 「インフラ(基盤)」
2018年の暮れにデンマークは、ある特定された罪を犯したり居住許可がないにもかかわらず様々な理由で本国送還できない難民たち100人を、ある島に建てた施設に収容する計画を発表しました。難民受け入れに伴い、設備の整備や確保が必要となりますが、このような設備をsocial infrastructure「社会インフラ(基盤)」と表現します。
Strengething social infrastructure is necessary to host refugees.
(社会基盤を強化することは難民を受け入れる為に必須だ。)
関連語
- ⑥social rehabilitation「社会復帰のためのリハビリ」
- ⑦accomodation「宿泊所」
- ⑧detention center 「収容所・拘留所」
- ⑨vetting process「審査手続き」
- ⑩jail-like 「牢屋のような」
【例1】
Education programs must be included as a part of the social rehabilitation plan in detention centers.
(収容所内の教育は社会復帰のためのリハビリプログラムの一部として含まれるべきだ。)
【例2】
Refugee-states seekers in the vetting process are detained in jail-like accommodations in Japan.
(日本では審査手続き中の難民認定希望者は牢屋のような宿泊所に収容される。)
日本にも不法滞在者や審査の過程の難民認定希望者を含む外国人を収容する施設がありますが、鉄格子に囲まれた牢屋のようなものだと言われています。面会時間は弁護士などの例外を除き30分であり、外の世界と完全に隔離されており、難民認定を受けた人も日本語が話せないことから社会復帰が遅いことが課題として挙げられています。逆にイギリスでは、運動施設や図書室、受講可能なパソコンや言語の授業といった学習環境が整備がされており、被収容者が社会復帰後はやく自立のできる収容所のあり方が見直されています。
まとめ
今回は難民問題において、受け入れ国側が直面する課題を3つのポイントともにご紹介しました。世界難民危機の背景には宗教や政治の相違により引き起こされた紛争や迫害がありますが、そこには私たちが今日解決すべき課題が映し出されていることも事実なのではないでしょうか。是非参考にしてみてください。
【関連ページ】英語で時事テーマを語ろう!「難民問題」について語るときに使えるキーワード10選①
【参照サイト】Trump to Cap Refugees Allowed Into U.S. at 30,000, a Record Low – The New York Times
【参照サイト】Japan to curb asylum seekers’ right to work from Monday | Reuters
【参照サイト】法務省:難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて
【参照サイト】This World Refugee Day, Let’s Address Fraudulent Asylum Claims That Are Detrimental to Legitimate Asylum Seekers| Center for Immigration Studies
【参照サイト】言語多様性の謎:パプアニューギニア(GNV)
【参照サイト】イギリスの収容所に学ぶ「正門から出る以外はできるだけ自由を保障」|活動レポート|難民支援協会の活動 − 認定NPO法人 難民支援協会
蟹っ娘(かにっこ)
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