リーディング力は総合的な英語力に直結?子どもの英語学習に洋書の「多読」をおすすめする理由

英語によるコミュニケーション力がますます重要視されるこれからの世の中で、子どもには英語を使いこなすスキルをバランスよく身につけてほしいと考える親たちも多いようです。

「英語力」というと、とくに「英会話」に必要な「話す・聞く」という能力がまっさきに思い浮かぶかもしれません。しかし、総合的な英語力を向上させるためには、実はたくさんの英語を「読む」という訓練も欠かせません。今回は、なぜ「多読」が子どもの英語教育で重要なのかを考えてみたいと思います。

洋書の「多読」が子どもの英語習得に効果的な理由

ここからは、洋書の「多読」が子どもの英語学習において重要だと考えられる理由について、5つのポイントを挙げてご説明します。

1. 語彙力が向上する

英語力を上げるためには、まずある程度の英単語を知っている必要があります。必要最低限の単語を知らなければ、英語での会話も成立しません。そこで、できるだけ英語のインプット量を増やすことで、英語の言葉に親しんでいくことが大切になってきます。しかし、英会話スクールに通わせるだけでは、子どもが得られるインプットは一般的に週に1〜2時間程度です。触れられる単語数も、子どもの英会話教室ではおそらく1レッスンにつき数十語にとどまるでしょう。

これに対して「英語の本を読む」という訓練なら、取り組み次第では日々、数百の単語をインプットすることも可能です。第二言語習得理論の説では、学習者は一つの英単語を覚えるためにおよそ15回その言葉に触れなくてはならないと言われています。大量のインプットを効率よく行い、単語を習得する手段として、多読は最適です。

2. 英文法を自動的に処理する力が身につく

英語で会話をしたいと思っても、文法が頭にしっかりと入っていなければなかなか上達しません。加えて、文法を知識として「知っている」だけでは不十分で、自由自在に「使える」レベルにまで達していることが英会話力向上の鍵になります。英語で話しているときに、いちいち文法を頭の中で意識することなく、自動的に文単位の英語がでてくる能力が必要です。

英会話を練習する過程では、「話す」訓練に終始しがちなため、しっかりとした文法能力を身につけるのは難しいでしょう。また、学校で教わる「英文法」を学ぶだけではやはり、文法のメカニズムを自動的にすばやく処理する頭をつくることは困難です。

英語の多読を行うには、英文を自動的に理解できる能力が必要になってきます。ここで、英文法のことを毎回意識的に考えなくても理解できる「自動化」という能力が育まれます。これは英会話力をアップさせるためにも必須の能力なので、ぜひ多読を通して伸ばしていきましょう。

3. 英語圏の文化を学べる

日本で暮らしている子どもたちが、実生活で多様な言語や文化に触れる機会はそれほど多くないかもしれません。しかし、将来世界を舞台に羽ばたいていくためには、他の社会の他の文化についても知識を深めることが重要になってくるでしょう。洋書を子どもの頃から多読することは、そこで触れられている他の文化について学ぶことにつながります。

海外からの英語話者とは、共通のトピックや知識がないと話がなかなか続きません。他文化に対する理解力も、英語力の立派な一部です。多読を通してぜひ多文化に触れるチャンスを増やしてください。また、日本文化について英語で対話する能力も身につけておくと、とても役に立ちます。英語で日本について書かれた本にもぜひ挑戦してください。

4. 入試で役に立つ

高校・大学入試は「4技能試験」の導入によって、従来のものとは大きく変わりつつあります。「話す能力」が注目されがちですが、その一方で大量の英文を読み、それについて英語で論ずる、といった課題も増える傾向にあります。これらは、日頃から多読を通して大量の英語に触れていないと難しいタスクです。

日常的に英文に親しんでおくことで、すばやく読む能力だけではなく、ライティングの能力も徐々に向上します。英文法が「自動化」された形で頭に入っており、かつ多種多様なトピックに多読を通して慣れ親しんでいれば、英作文の課題に苦しむことはなくなるでしょう。

5. 多読は小学校入学前から始められる

保護者が気になる点は、「いつ子どもに多読を始めさせるべきか」ということでしょう。多読といっても、いきなり文字ばかりの本を小さな子どもに押し付けるのは無理があります。年齢に適した本を選ぶことがとても大切です。

小学校入学前・小学校低学年の子どもたちには、短い英語の絵本や「Picture Dictionary」をおすすめします。「Picture Dictionary」は複数の出版社から出版されている写真や絵で構成された辞典です。写真や絵を見ながら具体的なイメージを通して英単語を楽しく覚えられるのがポイントです。

小学校高学年や中学生になると、英語に対して知的なアプローチができるようになります。学校で英語教育も始まっているので、教わったことを活かして多読ができるようになるのがこの年代です。ここで、ピアソンのグレイデッド・リーダーズ(Pearson’s Graded Readers)のような教材が役に立つようになります。平易な英文で書かれているので、拾い読みをするだけでも「生の英文」に触れることができます。

まとめ

以上、洋書の多読がどうして総合的な英語力のアップに欠かせないのかを見てみましたが、いかがでしたか?多読をすることで、読む能力だけではなく書く・話す能力も伸ばせることをおわかりいただけたと思います。洋書がインターネットで簡単に注文でき、電子書籍でも手軽に読めるこの時代、ぜひ多読でお子さんの英語インプットを最大限に高めてください。

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茂呂  宗仁

茨城県生まれ、東京在住。幼少期より洋画に親しみ、英語へのあこがれを抱くようになる。大学・大学院では英文学を専攻し、またメディア理論や応用言語学も勉強。学部時代より英米で論文発表も経験。留学経験なくして英検1級、TOEIC970、TOEFL109を取得。現在は英会話講師兼ライター・編集者として活動中。