プロが教える「おうち英語」のススメ。まずは親子で英語を使ってみよう!

英語圏ではない環境で英語力をつけるためには、少しずつでもいいので毎日、英語を使うことが重要です。英語講師を務める筆者は、保護者の方からよく「発音が気になるから」「ネイティブではないから」といった理由で子どもに英語で話しかけるのは気が引ける、と言われるのですが、そんなに気にする必要はありません!

おうち英語をスタートするポイントですが、まずは保護者から積極的に英語を使うことです。英語を学び続けるために大切なのは「英語は楽しい!」ということを伝えること。そのためには、身近にいる家族がが楽しそうに英語に親しむ様子を見せるのが、とても効果的です。

発音などに関しては、プロの英語講師やYouTube、CDを見聞きすることで十分フォローできます!今回は、その一歩として、レッスンでもよく使っている、英語での声がけの仕方をお伝えします。

1.英語圏の親が子どもに伝える、“please”は英語の「Magic Word(魔法の言葉)」

学生時代のこと。ある日、中学校のネイティブの先生が「英語で最も大事な言葉はのは“please”という言葉だよ」と教えてくださいました。これは、先生が子どもの頃から両親に言われていたことで、“please”という「Magic Word(魔法の言葉)」があれば、相手に丁寧に、自分の想いを届けられると、説明してくれました。

先生から聞いたこの言葉は、その後も英語を学び続け、海外留学を経験し、翻訳や英語講師の仕事をするようになった今でも心に残っています。先生が話していたとおり“please”という言葉は魔法の言葉。英語でのコミュニケーションの際に、この言葉を正しく使うことで、相手とのトラブルを避け、人とも仲良くなれます。そんな大切な言葉だからこそ、最初におうちで使う言葉として“please”を選びました。

親子でやり取りする際の“please”の導入方法ですが、まずは物の受け渡しからスタートしましょう。“○○,please.”(○○取ってください)という言い方で、○○の部分に、食事中なら食べ物、おもちゃで遊んでいる時はおもちゃを入れてみましょう。欲しい物を指して、こちらに渡して欲しいというジェスチャーを付けると意味が伝わりやすいです。

“○○,please.”の意味が子どもに伝わったら、今度は子どもの方に“please”を使うよう促します。

子:ママ、オレンジジュース頂戴!
親:OK.Orange Juice,…?(pleaseが出てこなければ”プリ…”とヒントを与える)
子:Orange Juice, please!
親:Good!(ジュースを渡す)

おうち英語TIP①「日本語を混ぜてもOK!まずは毎日英語を使ってみよう」

“○○,please.”は日常の会話に取り入れやすい表現ですが、○○の部分に入る英語は、いつでもすっと口をついて出てくるわけではありません。“please”は日本語と組み合わせても、言葉の持つ機能(丁寧に依頼する)は失われません。最初のうちは○○の部分は「牛乳、please!」のように、日本語でもOKです。とにかく、親子で日常的に“○○,please.”を使ってみてください。

【歌って“please”を覚えるのもおすすめ!】
このような歌を一緒に歌いながら覚えると、覚えやすいです。

2.学校でも頻出。“Here you are.” “Thank you.”をマスターしよう

次にご紹介したいのは毎回の英語レッスンで必ず行っている“Here you are.” “Thank you.”のやりとりです。英語カルタの時にカードを渡してもらう、生徒にペンを取ってもらう、講師から生徒に出席カードやシールを渡す、生徒同士で消しゴムなどの貸し借りをする…など、このやりとりが使われる場面は、本当にたくさんあります。

日常生活で使う時は、前の段落でご紹介した“○○,please.”の表現と組み合わせ、何かを渡す際に、“Here you are.”を言うようにするというのが一番実践しやすいパターンです。耳が慣れてきたら、役割を交代して、子どもに“Here you are.”と言ってもらうようにすると良いでしょう。

例えば、飲み物を渡す時にどれがいい?と尋ねた後、答えを英語で言ってもらうのも楽しいです。同じように、おやつタイムにいろんなお菓子を並べて「どのお菓子がいい?」と聞いてみて、英語で“○○,please.”と答えられたら“Here you are.”と手渡します。英語を話せたらお菓子がもらえるので、ゲーム感覚で楽しめると思います!

子:Orange juice, please.
親:Here you are.
子:Thank you.
親:Good!(ジュースを渡す)

おうち英語TIP②「基本のやり取り+1で、英語の会話を増やしていく」

例えば“Here you are.” “Thank you.”であれば、会話の始まりに“○○,please.”を足すことで、英語のやり取りがちょっぴり長くなりました。さらに慣れてきたら、会話の終わりにも1文足すことで、より英語らしい会話のパターンが使えるようになります。この「+1」を常に心がけると、自然に会話の量が増えていくのでおすすめです。

子:Orange juice, please.【+1】
親:Here you are.
子:Thank you.
親:You’re welcome.(どういたしまして)【+1】

【歌って“Here you are.”を覚えるのもおすすめ!】
こちらの歌はやりとりを何度も繰り返すので、覚えるツールに最適です!

3. いつでもどこでも親子で英語クイズ、“What is it?” “It’s ○○.”

ここまで覚えたら、少し上級編のフレーズ“What is it?” “It’s ○○.”に挑戦してみましょう。こちらも、英語教室で毎回使う表現です。“What is it?”「それは何?」という質問表現を使えるようになると、絵カードや身の回りの物を使って質問し合うことができるので、おうちで英語を使う頻度を各段に増やすことができます。

おすすめの使い方は、アルファベットや数字、または絵が描かれたカードを使った英語カルタです。読み手である保護者がアルファベットや絵の名前を英語で伝え、子どもは聞いた内容が描かれたカードを探して取ります。

この後ががポイントです!子どもがカードを取った時に、すかさずカードを指して“What is it?”と聞いてください。子どもには、“○○”と単語だけでなく、できれば“It’s ○○.”という文で答えさせるのが望ましいです。とはいえ楽しいのが一番なので、まだ単語でしか答えられそうにない場合は強要する必要はありません。なお、私のレッスンでは、答えられたらカードを自分の持ち札にできるルールを採用しています。

親:Apple.
子:(リンゴのカードを取る)
親:(子どもが取ったリンゴカードを指して)What is it?
子:Apple./It’s an apple.
親:OK!/That’s right!※可能ならGood job!と英語でほめてみください!

カードを使う際の注意点としては、“What is it?” “It’s ○○.”のやり取りは、基本的に単数(=1つの物を聞く表現)なので、絵に複数の対象物が入ったカード(例えばリンゴが2~3個描かれているなど)は、なるべく使わないようにします。

カードはアルファベットのカードや100円ショップなどで売られている英単語のフラッシュカードなど、家にあるものでももちろんOKですが、おすすめは、下記の厚地のカード54枚が入ったカードのセットです。表には日々の生活でよく使う英単語とそのイラストが、裏には単語の文字だけが書かれおり、単語のスペルを覚える学習にも最適です。ちなみに、全てのカードを覚えると54個の単語を覚えられます。

First Words Flash Cards

また、カードを使わなくても楽しめる方法もあります。それは、家にあるものを指さして、答えてもらう方法。公園で椅子や花や木、空を指さして聞いてみるのもおすすめです。

おうち英語TIP③「正しさは後回しに、まずは英語を話す雰囲気作りを優先」

“What is it?” “It’s ○○.”のフレーズについては、対象物が複数の時は、“What are they?” “They are ○○.”と複数形のやり取りになるのが文法的には正しいです。また、単数の時は○○の前に“a” や “an”をつける必要があります。しかしながら、最初からそうした文法の正しさを求め過ぎると、話す意欲を失う子どももいます。また「正しさ」を追求すると、親も苦しく、家庭で気軽に楽しく英語を使うことができなくなります。

まずは、おおらかな気持ちで、親子で一緒に“What is it?” “It’s ○○.”と、英語で沢山質問し合ってみてください。慣れて余裕が出た頃に、できる範囲で単語の前に“a/an”を付けるよう促してみましょう。

【歌って“What is it?”を覚えるのもおすすめ!】
“What is it?”のフレーズを覚えるには、この歌がおすすめです。

まとめ

「子どもに英語で話しかける」と聞くとハードルが高く感じる方もいらっしゃるかと思います。でも、子どもは親の背中を見て育つもの。身近な存在であるお父さんやお母さんが楽しそうに英語に取り組んでいると「なんだか楽しそう!」と子どもも英語に遊び感覚で親しめるようになります。

文法や正しい発音については、YouTubeやCDを使ったり、必要に応じてプロの英語講師のレッスンを受けるなど、他でサポートしていけば大丈夫です!ぜひ親子で、自宅から英語の世界の扉を開け、「おうち英語」を楽しみながら英語を身につけていきましょう!

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曽我美穂

英語講師・ライター。大学在学中にニュージーランドの大学に交換留学。英語で授業を受け単位を取得。卒業後は英語学校の広報としてバイリンガルな環境で7年間働く。2013年に英語教室RAINBOWを開設。これまでに未就園児から大人まで70人以上を指導。TOEIC965点。二児の母。